cio賢人倶楽部 ご挨拶

オピニオン

一番IT化されていないのはIT部門の業務

更新: 2014年6月1日

顧客の嗜好や生活スタイルの変化に伴い、年々、企業を取り巻く環境の変化のスピードが速くなってきているのは、弊社のような小売業に関わらず、皆様も身をもって感じていると思います。適正なコストでその変化のスピードにいかに対応するか、IT部門としては頭の痛い問題ではないでしょうか?

何しろITは、これまた、とんでもないスピードで変化(進化)しています。どんどん出てくる新しいITを自社の業務に使えるのか?活用できる部署はどこか?どんなリスクがあるのか?・・・。キャッチアップしていくのは大変ですが、きちんと確認していかなくてはなりません。新しい技術を用いて業務改善を提案し、新規ビジネスに貢献するのはIT部門の重要なミッションだからです。

もうひとつ、企業のIT部門は大きな問題を抱えていると思います。どこの懇談会などでお話を聞いても出てくるIT人材の話です。「自社のビジネスや事業に精通し、プロジェクトマネジメントを実行でき、かつ最新のIT技術を駆使し、業務改善を実現していく。このような人材はなかなかいない。また新しい技術に対応する人材を育成できない」。こんなお話を伺います。

まして大規模なプロジェクトとなると、人材の確保はいっそう難しくなります。この人材の不足がIT部門の事業貢献、ひいては企業の成長を大きく阻害しているのでは?と最近、痛感しています。そういう状況の中でも、当然、各企業は改革を進めていかなくてはいけません。IT部門は優先順位を見極め、できることから(効果の高い施策から)実行していくことになると思います。

最近 想うことは、限られた人材のリソースをいかに配分し、優先順位を決め、社内業務の効率化(生産性向上)を進めていこうとはするものの、何故こんなにもIT部門の業務が「IT化されていないのか?」です。業務効率を向上させるITを提供するはずのIT部門の業務が、実は一番効率化されていないなぁということです。

そればかりか、内部統制の実施、セキュリティの確保、個人情報の保全など、IT部門の業務はますます煩雑になっています。クラウドの普及、パッケージの進化、テストツールなど、ある意味効率化の手段は出てきていますが、こと「物つくり」の部分については、なかなか生産性が向上していない現実があります。要件を詰めるフェーズ、構築するフェーズ、テストするフェーズなど、それぞれで少しでも早く確実に進めるようにするための技術革新を心から期待しますし、進めたいと思います。もっとも、「人が想うことを具体的な形にする」のが仕事ですから、もともととても難しいことなんですが。

そんな中、IT業務の効率化が進まないのは、IT部門(業界)の人たちが「効率化してしまうと、自分たちの仕事が無くなってしまう!」と勘違いしているのではないか?とすら思えてしまいます(笑)。もちろん、決してそんなことはなく、「今までのもの作り」以外にも、やらなくてはいけないこと、できることがたくさんあります。最近よく言われる「ビックデータの活用」などは、まさしくこれからのIT部門(業界)が新しい価値を生み出していくよい例でしょう。

昼も夜も日々の運用業務に追われ、次のシステム開発に追われているだけの仕事では、なんともつらく、ますます人材の確保も難しくなってきてしまいます。IT部門として会社に対して新しい価値を生む仕事をしていくためにも、IT人材を確保して行くためにも「IT部門の業務のIT化」を進めて行きたいものです。

株式会社ローソン
執行役員 IT副管掌
兼 ITステーション ディレクター
佐藤 達