cio賢人倶楽部 ご挨拶

オピニオン

経営に貢献するCIO/IT部門を目指して ~ あるCFOの取り組みからの考察

更新: 2014年12月1日

2014年9月から私はCIO賢人倶楽部の倶楽部活動の事務局を担当させて頂いている。倶楽部活動はエキサイティングだ。そこには、非日常の世界がある。様々な業界のリーディングカンパニーで修羅場をくぐって来たCIOが、一同に会するのである。教科書的な発言はなく、皆が本音で語る。本当に沢山の刺激を頂いている。この活動を通して、倶楽部の設立趣旨である「CIOの地位向上と企業経営への貢献」に寄与したい。

私は、監査法人を母体とするコンサルティング会社に在籍していることから、CFOとの接点が多い。彼らは経営トップの右腕としていかに経営に貢献するかを、常に考えている。先日、あるCFOから、そのための工夫を聞く機会があった。そのCFOは配下にコントローラーという役職を配置したのだという。コントローラーは大きく2つの役割を担っており、1つは事業部門が利益目標を達成できるよう、ファイナンスの視点からアドバイスすること。事業部門を後押しする、アクセルの役割を担う。もう1つはコンプライアンス違反のないよう、事業部門の行き過ぎを牽制することである。こちらはブレーキの役割と言える。

このCFOは、コントローラーを、具体的にどのように活用しているのだろうか。多くの会社では、利益目標の達成は事業部門に任せ、経理部門は集計するだけである。この会社では、CFOの指示のもと、コントローラーが事業部門の現場を回り、重要な会議に同席し、ファイナンスの視点から課題や対応策を事業部門長へ報告し、アドバイスするという。CFO自らは全社を俯瞰しながら、事業部門の参謀役としてコントローラーを現場に放ち、操ることによって経営に貢献しているのである。鵜飼いにおける鵜匠と鵜の関係だ。

このCFOの取り組みは、多くのCIOにとっても参考になるかも知れない。「事件は会議室で起きているんじゃない、現場で起きているんだ」というおなじみのセリフの通り、執務室にこもっているCIOが、事業部門長に対して、魅力あるIT施策を提案できるだろうか。コントローラーを設置するか否かは別として、主体的に深く事業部門に関与し、事業部門の状況を正確に把握した上で、ITの視点から事業部門の目標達成に貢献することが重要なことと考える。

ユーザー=現場部門のITリテラシーの向上やクラウドサービスの普及に伴い、ユーザー部門が直接ITを調達できる時代が到来しようとしている。そのとき、IT部門はどんな役割を担うべきだろうか。 経営に貢献できる組織、必要とされる組織の実現に向けて、本稿が一助となれば幸いである。

KPMGコンサルティング株式会社
パートナー 立川智也