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企業内情報システム部門の未来を考える(下)~Globalization、Cloudizationに向け人材に着目せよ

更新: 2015年7月15日

「企業内情報システム部門は、LOB(事業部門)の協力を得にくくなる中で、今までより少ない人数で今までより多くの成果を出さなければならない」。前回、こう指摘した。“Cost Leadership” と “Operational Integrity” 、そして “Value Creation”の3つをいかに鼎立させるのか、という命題でもある。

筆者はここに至って初めて、クラウドなるものを深く考え始めた。クラウド登場間もない頃は、その機能やメリットなどは分かるが、成熟度が低かったため、あまり興味もそそられなかった。しかし、2015年に入って、クラウドサービスを生業とする、あるグローバル企業のサービスポートフォリオに触れたとき、進化の速さと完成度の高さを目の当たりにした。同時に自分の不勉強さを大いに恥じた。

クラウドの進化に着目する

初期のクラウド、例えばSaaSは単一のビジネスアプリをインターネット経由で利用し、その利用に対して料金を支払うものだったが、セキュリティポリシーの納得性や料金体系の魅力に欠けるものが多かった。しかし現在では、優秀なプラットフォーム上に構築された主要アプリケーションの全ポートフォリオを、将来にわたって計画し、サービスとして提供するクラウドが私達の目の前にある。

発注から稼働までの期間も月ベースから週ベース、日ベースへと劇的に短縮され、 TCO(総保有コスト)を考えるとクラウドの利点は非常に大きい。あるクラウドサービスそのものをグローバル標準と位置づけ始めている企業も出現している。

先進的なクラウドサービス企業ではユーザー企業のビジネスを熟知したスペシャリストが活躍している事実もある。彼ら、彼女らがユーザー企業の経営企画部門と一体となって情報システムの中・長期計画を立案している光景を想像すると、情報システム部門の存在価値はどうなるのだろう?と考えざるを得ない。

換言すれば、Cloudizationが企業の重要な戦略であるGlobalizationのニーズを満たすようになる時、企業内の情報システム部門とそこで働く人は一体どうすれば良いのか、という問題だ。切り詰められた予算と削減された人員数は、この疑問に対する回答をより難しいものにすることは間違いない。皆さんはどう回答するだろうか?

冒頭、筆者は「未来の企業内情報システム部門では、今とは比較にならないほど人が大切になってくる」と書いた。これが筆者の答である。

激化する競争の中で企業が生き延び、成長を手にするために、これまでより多くのプロジェクトのそれぞれに、これまでより高い期待がかけられる。情報システム部門は、切り詰められた予算を極限まで効果的、効率的に活用し、プロジェクトの成功率を高めなければならない。そうであるならば、そしてビジネス部門が「プロジェクト」にプライオリティを置けなくなりつつある今こそ、プロジェクトを本業としていた企業内情報システム部門に大きな役割を果たすチャンスがあるのではないかと筆者は思うのである。

そのためには新たなGlobalizationの大波に呑まれる前に、Cloudizationをフルに活用することが必須である。主人公は新しく「プロジェクト屋」に看板替えした情報システム部門だ。それを実現するために、私達は、必要な技、知恵、経験、そして何よりも心(マインドセット)に重点を置いた情報システム部門の人材育成に、精魂を注ぎ込まなくてはならない。

未来の担い手に求められる8つの力

さてCIO賢人倶楽部の今年の活動課題は、「情報システム部門の人材の育成」である。そこで筆者としては、未来の担い手が次に掲げる力を獲得するための支援を行うことを提言したい。

  • 異文化を理解し、内外の利害関係を協力関係に変えることのできる、組織横断的コミュニケーション力
  • 新技術を単体としてのみならず、トータルポートフォリオとして短時間で理解することのできる技術力
  • ビジネスプロセスを構築、変革するための設計力
  • 現状を「変える」アイデアを創造するひらめき力
  • ステークホルダーおよび社内ユーザー部門と社外のサービスプロバイダーを取りまとめて、プロジェクトを推進するプロジェクトマネジメント力
  • サービス開始後のサービスデリバリー・マネジメント力
  • 学んだことを経験として整理し、蓄積する記憶力、そして応用力
  • 自身のビジネスフィロソフィーを持ち、狙った変革を推進する勇気

言うまでもなく、このすべてを修得できる人材など、そう世の中にいるものではない。すべてを修得することは重要ではなく、この中のひとつでもマスターできれば十分である。それぞれに秀でた人材が8人いれば完全形になるのだから。

CIO賢人倶楽部 アドバイザー
沼 英明

参考:Manufacturing Resource Planning: MRP II UNLOCKING AMERICA’S PRODUCTIVITY POTENTIAL – Oliver W. Wight