cio賢人倶楽部 ご挨拶

オピニオン

”全力疾走”の8年と浮上した新たな難問

更新: 2015年9月10日

 長年勤めた経理・財務部門からIT部門長への異動を命ぜられたのが2007年。すでに8年が過ぎました。当初の4年間はIT部門が抱えるバックログの解消に向けてのひた走り、全力投球でした。「造る」「改造する」「アウトプットをきちんと出す」。精度はともかく、効率よく”こなす”ことに集中したのです。

 バックログの解消だけではありません。その後に控える基幹システムの再構築に備えた要員の補強とレベルアップも目的でした。日々の業務だけでも大変な中でOJTを兼ねるのはどうなのかという疑問も頭をよぎりましたが、シビアな経験も教育の一環ではないかと虫のよい考えをして振り切りました。

 今こうして振り返ると、部員たちも外部のパートナーもよく頑張ってくれました。自分自身もきつかったけれども、宣言した工期を守るプレッシャーで肉体的にも精神的にも辛かったのは、やはり部下たちだったでしょう。何もわかっていない上司のもとで本当に良くやってくれたと思っています。

 一段落したところでチームを再教育・リセットし、受発注・製造・物流・売掛金管理からなる基幹業務システムの再構築に着手しました。途中、失敗もトラブルも色々ありましたが、今年の3月をもって当社の全事業所への導入を完了。現在はグループ会社への導入を推進しています。

 開発を担ったチームも解散。新システムの効率を最大限引き出すべく、小チームによる利用部門の支援と運用整備にシフトしました。基幹再構築はメインフレームからLINUXへのプラットフォーム移行を伴ったからです。これでホッと一息できるかと思いきや、問題が1つ出てきました。

 全力で走ってきた結果としての、“燃え尽き症候群”です。新しい技術を修得しながらも暗中模索・試行錯誤の連続で、なかなか見えないゴールを目指したのがこの8年間でした。何とか終えて一息ついた今、蓄積した知識や技術でしか判断しないというか、その範囲の中で解決しようとする傾向が出てきたのです。

 当社では業務課題の解決手法にドラッカーの5つの質問を用います。

1. What Is Our Mission?
2. Who Is Our Customer?
3. What Does the Customer Consider Value?
4. What Is Our Results?
5. What Is Our Plan?

 この中でCustomer Value(顧客にとっての価値)は、残念(?)なことに進化してしまうのです。新システムで実現したことは、次の日からはもう当たり前で、さらに次なる要望が出てきます。だからこそ進化するわけですが、ところがこちらはそこで止まってしまう。なぜでしょうか?

 以前なら新しい技術の修得や目指すべき方向性は、すべてメインフレーマが教えてくれました。選択肢もあまりなく、やるべきことが誰でもわかったのですが、オープンな世界では、方向性も取り入れる技術も自分たちで調べて判断しなくてはなりません。一言で言えば“めんどくさい”のです。ですから強いリーダーが目標を決めてくれないと進化へと動かなくなります。

 ここで問題です。「次世代のリーダーをどうやって育てるか?」、「常に考え続ける、そしてより良い方向に向かって、絶えずチャレンジし続けるチームをどう作っていくか?」。あと2年、IT部門長として10年の節目を迎えるまでには、いずれか1つでも答を見つけたい考えています。なかなか引退できません。

山崎製パン株式会社
執行役員
計算センター 室長  
石毛 幾雄