オピニオン
望まれる情報システム部門と物流部門の連携
更新: 2015年12月1日
筆者は物流関連のコンサルタントをしている。したがってCIO賢人倶楽部のメンバーではないが、この場を借りて、ぜひCIOの皆様にご検討・ご理解頂きたいことがある。ロジスティックスにおける”情報流”についてである。
まずロジスティクスとは何か?米国のサプライチェーン専門家が構成する団体であるCSCMP(Counsil of Supply Chain Professionals)は、こう定義する。「サプライチェーンプロセスの一部であり、顧客要求に適合させるために、商品、サービスとそれに関連する情報について、発生地と消費地に至るまでの動脈および静脈のフローとストックを効率的かつ効果的に計画、実施、統制することである」 。
この定義は、CSCMPの前身であるCLM(Counsil of Logistics)のそれと比べ、ロジスティクスがサプライチェーンプロセスの一部であることを明確にしたことを除き、変わっていない。CLMの定義は今から10年以上前になされており、さらにその前段があることを考慮すると、米国では1990年代から商品やサービスの流れ(物流)だけでなく、関連する情報の流れ(情報流)をマネジメントする必要性を認識していたことになる。事実、米国では同時期に流通情報化をベースとしたQR(クイックレスポンス)やECR(食品雑貨業界におけるQR)といった物流に関するコンセプトが登場している。
翻って日本はどうか。筆者はコンサルタントとして、数多くの企業の物流業務改革を支援したり、見聞きしてきた。そのうち一部の先進的企業は情報流と物流の関係を十二分に認識し、物流の効率化を推進するために、情報流のマネジメントのあり方の見直しや情報処理の効率化に着手することを厭わない。当然のことだが、必要に応じて情報システムにも投資する。
他の多くの企業は、情報流と物流が密接に結び付いているとは認識しておらず、物流業務改善においては物流の効率化にフォーカスしてしまいがちだ。特に物流部門が主管して物流効率化を図る場合、情報流は与件であって変えることは想定外。情報流を大きく変えようとすると情報システムへの投資が必要となるし、仮に上申しても経営層が二の足を踏むといったこともある。
しかし業務改善に熱心に取り組んできた結果として、与件を取り除くことなくして、さらなる成果を上げることが困難な物流現場が少なくない。情報流の取り扱いが与件となっている場合、その見直しが必要となるゆえんでもある。
一方で、先進企業の物流現場では、実績収集・分析等の物流管理サイクルが日次からリアルタイムに変わってきている。例えばフロア別に作業物量と配員の状況をリアルタイムで可視化し、フロア間で人員を移動させ、常に人員リソースに過不足がないようレイバーコントロールをする方向である。きちんと実施すれば作業がないことによる手待ち等の非稼働時間を大幅に短縮できる。物流現場が講じることができる打ち手の幅を広げられるのだ。
ところがそんな先進企業の中にも、物流センターでのピッキングや梱包よりも、例えば注文情報の処理に時間を要している問題がある。物流現場がリアルタイムでレイバーコントロールを行っていても、作業をすべき注文情報が送られてこなければ、非稼働時間を根本的になくすことはできない。
このような問題が生じる背景には、注文情報の処理にどの程度の時間を要しているかを経営層が把握しているケースがそれほど多くないことがある。目立たないので致し方なかった面もあるが、さらなる物流効率化に欠かせない要素であることも確かだ。そこで筆者は情報システム部門と物流部門がもっと連携し、情報発信する必要があると考えている。改善に着手されることが少ない注文情報の処理に経営層の目を向けさせ、与件となっている注文情報の処理時間を短縮させる取り組みは、その一例に過ぎない。情報システム部門には、これまで以上に物流現場と密着して欲しいと願っている。
KPMGコンサルティング
マネジャー
播磨隆弘