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AI活用に関して協業の可能性はあるか?

更新: 2018年8月1日

 人工知能(AI)の活用には、商品の購入履歴データを分析して顧客の好みを明らかにし、推奨する商品を案内する事業拡大を目指すようなものや、サーバーのログを分析してハードウェア障害の予兆を早期に検知するようなケースなど様々なものがあります。仮に前者を「攻めの活用」、後者を「守りの活用」とし、今回は「守りの活用」について考察してみます。

 例えば、サーバー障害のアラームデータから優先対応すべきアラームの抽出と対応の優先順位を決めることに成功している事例、耐用年数に応じて交換する想定の部品について、監視カメラによる画像データを分析し、状態が良くない部品は早期に交換するようにして故障発生率を下げることに成功した事例などを聞いたことがあります。

 ただし、AIが対応できるのはあくまで過去にあった事例。初めて発生したアラームの原因分析は人がやる必要があるはずですし、監視カメラのモニタリングでも100%とはいかず、良い状態だった部品が故障してしまう場合があります。その原因分析は人が行い、その結果を新しいデータとしてAIに学習させることで分析精度を向上することができます。つまりAIの分析精度を高めるためには、人が行った新しい分析結果をAIに追加するサイクルを常に回していくことが大切になります。

 そこから言えることは、システム障害対応などの「守り」にAIを活用する場合、1ユーザー企業の過去の障害事例だけでなく、多くのユーザー企業のそれを活用できれば、より精度の高い障害対策が実現できるのではないかということです。AIで障害の予兆を早期に検知するなど故障の未然防止率が飛躍的に向上すれば、冗長化している2台のマシンを1台にすることもできます。それによってシステムコスト削減やリソースの有効活用につながるのではないかとも思っています。

 一人の知見では解決できない問題も大勢の知見を持ち寄れば解決できるように、AIにたくさん知見をインプットすれば、私よりもはるかに多くの情報を持ったAIが的確なアドバイスを私に与えてくれる時代が到来しつつあります。そしてシステム障害対応などの守りの活用であれば企業の枠を超えて、みんなで賢いAIを作れるのではと考えます。筆者自身、もっとAIを学び、守りの活用に加え攻めの活用にもトライしたいと思いますが、まずは守りの活用に関してCIO賢人倶楽部のメンバー企業やそのほかの企業と、何か活動ができるといいと考える今日この頃です。

株式会社ふくおかフィナンシャルグループ
IT統括部 副部長
中村 成太