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論理思考、デザイン思考からアート思考へ

更新: 2019年12月6日

「デザイン」という単語がよく出てくるようになった。従来使われてきた製品やファッションにおけるデザイン概念とは少し異なるもので、「デザイン思考」という言葉である。もともとデザインの概念は広く、都市デザインや建築物のデザイン、インテリア・デザイン、交通デザイン、照明デザイン、グラフィック・デザインなど様々な分野で使われている。

意匠もデザインであり、設計もデザインだ。対象とする表現物が異なる、いろいろな分野にデザイン概念が存在しているわけである。語源を辿るとラテン語のdesignare(指名)やフランス語のdessin(図面)に由来すると言われるが、計画を形にして表すことが本来の意味である。

一方、最近頻繁に出てくる「デザイン思考」は「論理思考(ロジカル・シンキング)」と対比的に使われることが多い。どちらも課題解決のための思考法であるところは同じだが、思考のプロセスやアプローチは異なる。論理思考は課題解決のための方策を抜けや漏れがないように、まさに論理的に様々な検討を加えながらゴールを目指していく思考法だ。

様々な視点から検討することを効率良く進めるために往々にしてMECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive:重複や漏れがない)とか、3C/4P(Customer、Competitor、Company/Product、Price、Place、Promotion)分析とか、SWOT(Strengths、Weaknesses、Opportunity、Thread)分析といった、分析系のビジネスフレームワークを活用することが多い。

これに対してデザイン思考は状況を観察し、仮説を立てて思考を繰り返し、曖昧さを抱えながらも全体感を把握しながらゴールに向かっていく。プロセスではブレーンストーミングやプロトタイピングや検証などが活用される。論理思考とデザイン思考はそれぞれ分析と総合という概念でも説明されることがあり、例えば論理的に考える科学者などは分析思考をし、デザイナーは総合思考をする。相互に補完関係にあり問題解決の方向は同じである。

デザイン思考が叫ばれるようになった背景は、複雑な問題の解決や糸口が掴めないような問題解決には論理思考よりデザイン思考が適合するからだろうと思う。情報システムの開発でも複雑化するシステムのアプローチや開発プロセスにデザイン思考を適用する事例も増えてきている。

ところが最近「アート思考」が叫ばれるようになってきた。アート思考にはまだ確たる定義はないようだが、デザイナーがデザイン思考するように、アーティストはアート思考をしている。デザイン思考には相手を対象とした課題がありその対象のために思考錯誤しつつ解決を図っていく。

アート思考はアーティストが作品を作って行く時のようにテーマや課題を模索するところから始まる。それは個の信念、信条、哲学のようなものに基づいていて、美意識とも関連は深い。Appleの製品やサービス、GoogleやFacebookのような新しい形態のサービス環境などはアート思考からしか生まれてこないように思う。アート思考には既存の枠組みや常識のようなものは関係がない。自由な発想と行動で常識を覆すような、誰も思いつかないようなものを求めて共感や共鳴を作り上げていく。 デザインからアートへ目が向けられるようになったのは、複雑系社会の現象がいろいろな場面で露呈し始めていて、前例や常識に囚われていては解決できないことが増えているからだと感じている。異常気象の問題しかり、マイクロプラスティックの問題しかりである。企業活動においても、イノベーションのような外挿では達することが出来ない課題やDX(デジタル・トランスフォーメーション)などデザイン思考だけでは見えてこない課題が増えてきたことと関連性があるように思えてならない。

CIO賢人倶楽部 会長
木内 里美