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4度の改革からの学びと新たな挑戦

更新: 2021年4月1日

 2021年3月、43年間にわたった大和ハウス工業での職業人生を卒業しました。4月からNPO法人CIO Loungeで社会貢献に専念する予定です。引き続きよろしくお願いします。

 さて、大和ハウス人生を振り返りますと、入社後は経理部門に配属され、6年目からはオフコンによる経理システムの全国展開並びに運用に携わりました。西暦2000年問題に対応するためのシステム再構築ではプロジェクトリーダーを担当。そのほかも様々な情報システムに触れ、2010年からは情報システム部門の責任者を10年間務めました。

 この10年間の経験は、筆者にとって掛け替えのないものになりました。「信頼される情報システム部」を目指し4度の改革を行い、色々な学びを得ました。社会人としても大変成長できたと自負しているほどです。ここでは、その経験からの学びと新たなチャレンジについてお話ししたいと思います。

 2010年~2012年の基盤改革では、会計・人事システムをSAPで刷新し、並行して2008年に着手していたクラウド化の推進に力を注ぎました。グループ全体のガバナンス強化にも取り組みました。この時の基本方針は、世の中にある優れた良い仕組みを活用すること。それにより俗人化を排除でき、早期に安定した環境を実現できること、半面で外部依存が強まり、情報システム部門の技術的蓄積が弱くなることを学びました。

 2013年~2015年の構造改革においては、TOC(Theory of Constraints:制約条件の理論)を活用して全体最適を目指したマネージメントの強化に取り組み、開発生産性の向上、納期遵守、プログラム品質の向上に成功しました。当時、TOC に基づき全体最適の観点から開発されたプロジェクト管理手法であるCCPM(Critical Chain Project Management)の専門会社リアライゼーション社(サンノゼ)まで教えを請いに行ったことも覚えています。ただし、これらの成果だけでは「信頼される情報システム部」の道は実現できませんでした。

 2016年~2018年は組織改革です。「現場の真の要望」を早期に把握・実現すべく、事業部門のある東京本社に「東京情報システム部」を設立して三部体制に移行。適正な人員配置にも取り組み、情報子会社を合わせシナジー効果が発揮できる体制を作りました。一方で分業化が進み、部員の業務達成感が減少し、責任の所在があいまいになった副作用もあります。

 2019年から進めているのが技術改革です。これは現在進行中であり、経営や事業がより高度になりその要求がスピード化している環境に対応するため、スピード対応をすべきものについては内製化を進めています。

 これらの改革からの教訓は4項目あります。改革の結果として正の部分と負の部分が現れること、成果を伸ばし失敗を克服することにより更に高みを目指し続けなければならないこと、そのためにリーダーが自ら改革の先頭に立ち、怯むことなくチャレンジし続けること、そして経営をサポートするためにITは変化を恐れず即時対応するスピード感と目利き力を身につける必要があること、です。

 そんな中で、ぜひとも読者の皆様にも実践して欲しい「学び」の一つは、「外部人脈形成の薦め」です。幸い、筆者は社外での講演やコミュニティに参加させていただく機会に恵まれ、その中で多くの方と知り合い、友人と言える方も多く持つことができました。そうした方々との会話から多くのアイデアをいただき、業務上の判断に大変有効に機能しました。

 皆様も情報収集のためにセミナーに参加することがあると思いますが、講演を聞くだけでは本当に必要な情報を得ることは難しいと思います。できるだけ、その後の懇親会に積極的に出席し色々な方とお話しできる機会を持ちましょう。その時、留意すべき点は、相手の方の話を聞くだけでなく自分の経験や失敗談など相手の方が興味を持てる情報を提供することです。

 その後、意見交換など連携が取れれば友人関係になれる道が開けます。これは余談ですが、本当に友人関係となるためには仕事以外の付き合い(趣味などの体験の共有)が有用です。「ゴルフ・お酒・音楽鑑賞」など一緒に楽しんでみてはいかがでしょう。

 実は、この友人たちと思いを共有できたことが、私の次のチャレンジの道を拓いてくれました。2021年4月から活動に全面参画するNPO法人「CIO Lounge」です。これは元ヤンマーの矢島さん(現理事長)と残念ですが昨年亡くなられた元ダイキン工業の大西さんと3人で、酒宴の際に定年後の在り方について意見を交わしたときに出てきたアイデアから実現したものです。

 私たちは、長年「情報村」で働いて色々な経験をしてきました。これをそのまま捨ててしまうのはもったいない、いや社会的損失ではないか、何とか社会貢献できないかと夢を語り合いました。情報部門と経営層、あるいはベンダー企業とユーザー企業には大きな意識のずれが存在し、ITを有効に使いこなせてない現実があります。私たちがそれらの「懸け橋」となり、有効に機能させることで関西モノづくりの復権を実現したいと意気投合したことが、昨日のように思い出されます。

 CIO Loungeは当初、関西にある製造業の情報システム部門責任者やOBの方に声をかけ、任意団体でスタートしました。2018年にはNPO法人として認可され、2年の準備期間経て本年1月から本格的に活動を開始することができました。現在では35名の社員と72社のサポート会員(ベンダー企業)のご協力で運営しています。

 当法人はユーザーに寄り添い、経験豊かな社員が複数人で当該ユーザーのITに関する悩み事を解決することをモットーに「IT Rescue」を目指しています。サポート会員のご支援で運営していますので現在無償でお悩みに対応しています。ぜひお声掛けいただければ幸いです。

以上

NPO法人CIO Lounge(元大和ハウス工業CIO)
加藤 恭滋