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コロナ禍における働き方改革、 コーポレート・トランスフォーメーションが必須に

更新: 2021年7月1日

 2020年3月に長年担当してきたテクノロジー及びカスタマーサービスの担当から人事総務の担当になり、コロナ禍の中であっという間に一年が過ぎました。振り返りとともに、これからやるべきことも含めて、自分自身の整理の意味を込めまして投稿させて頂きます。

1)コロナ禍での働き方改革

 言葉を選ばずに話してしまうと、コロナ禍だったがゆえに、働き方改革は非常にやりやすい状況でした。皆様の職場でもおそらく同じ状況だと推察しますが、感染リスクと防疫という共通課題があったことから、フルリモート勤務やフルフレックスの実施、定期代からリモート手当への変更、本社のフリーアドレス化など、様々な施策を一気に進めることができました。

 半面、課題も鮮明になりました。残業が明らかに増えていること、会議以外のコミュニケーション不足からの会社に対する帰属意識の低下、孤立化からくるメンタル支障者の増加、などです。今後は社員の会社へのエンゲージメントレベルを引き上げること、その前提としてエンゲージメントレベルの可視化やメンタルヘルスケアの充実が必須になります。

 エンゲージメントの可視化では、例えば従業員満足度調査の形式を改める必要があります。従前は、おおまかには満足度が低い要因を調べる”犯人探し”でした。それを社員一人一人が会社に対してどのぐらいのエンゲージメントを持っているのかを計るように切り替えるのが1つです。

 メンタルヘルスについては、産業医や保健師へ直接相談するのは心理的にハードルが高い側面があります。そこで匿名のチャットで相談できるようにするなど、ハードルを下げることが大事だと考えています。もちろんすぐできる施策として上司や部下、同僚との公式/非公式のコミュニケーションをしっかりと定着化させていくことを実施していきます。

2)パーパス&バリューズの制定

 一方で、より包摂的な取り組みも必要です。アスクルは創業以来、「お客様のために進化する」という企業理念を掲げ、社員への浸透を図ってきました。半面、あまりにこの理念が強いことから、「これさえやっていれば良い」とか、「進化とは手段で企業のあるべき姿を現していない」などの意見が多数ありました。

 3年前、電撃的に創業CEOが交代し、ちょうど新たな会社の進むべき方向、存在意義をしっかりと社員に指し示す必要があるタイミングでもありましたので、第二創業の意味合いも含めてパーパス&バリューズを制定しました。弊社らしさを打ち出しながら誰もが理解できる言葉にするのはなかなか難しかったですが、下記の言葉にまとまりました。社員一人一人が自分事として理解し、行動変容するまでが大変な道のりですが、長い目で地道にやっていこうと思います。

パーパス: 仕事場とくらしと地球の明日に「うれしい」と届け続ける。
バリューズ: 変革と最速、多様性と共創、誠実と誇り

3)停滞感からの脱皮

 ご多分にもれず、アスクルも社員の増加や組織の拡大に伴って、大企業病にかかり始めています。自分がやらずとも誰かがやってくれるだろう、失敗するぐらいならやめておこうなどという思考パターンや、会社全体から本部へ、本部から自分が属しているチームへ、チームから自分へと、視野も内向きに狭くなるといったことです。それを一旦リセットし、外へ外への視点に切り替えていく必要があります。

 そこで直近実行可能な施策、例えば評価制度は評価が良い人と悪い人の差がかなり大きくなるような設計に見直し、役職定年・世代交代登用ルール定義、組織最適化などを行ってきました。今後はパーパスに沿って、社員のだれもが声を上げられる仕組みを整備し、社員からの自発的なアイデア出しや施策の立案・実行を可能にし、あるいは施策・プロジェクトを全社レベルで見える化する取り組みなどを実施していきたいと思います。

4)DXとともに

 中でも重要になるのがDX(デジタルトランスフォーメーション)です。アスクルのビジネスモデルはプラットフォーム型モデルですので、テクノロジーの最大活用、DXはパーパスを実現するために必須なのです。

 それに向けて8年前からシステムやサービス開発の内製化を進めてきました。しかし全社員に占めるエンジニアの比率はまだ20%に満たないレベルです。今後は採用もテクノロジー人材主体に切り替えていく予定ですが、最大の課題が現行社員のマインド変革です。テクノロジーの力を最大限活用した新たなサービスの創出、オペレーションの効率化を自分事として実施できるよう、DXを言う前に人のマインドのトランスフォーメーションを実践する必要があります。
 パーパスに沿ったテクノロジーをうまく活用できた事例を、小さなことも含めてより多く創り出し、全社共有し、時には報奨金、表彰制度も絡めながら、社員全員が自分でもできるのだと思えるようなムーブメントにしていきたいと思います。とりとめもない話で大変申し訳ございませんが、焦らず、粘り強くやっていきたいと思っています。

アスクル株式会社
CHO 人事総務本部長
秋岡 洋平