cio賢人倶楽部 ご挨拶

活動内容

復活日本 「経営に貢献するITとCIOの役割」セミナー開催

テーマ:経営に対する情報発信・説明

更新: 2013年7月9日

企業のグローバル化とITの進化に対し、多くの日本企業が十分に対応できていない現実があります。グローバルで戦うことは、市場も大きいながら、競争やリスクも大きく、迅速に各地域の経営状況をウォッチするなどの仕組みをいれる必要があり、そこにはIT活用無くして成り立たない現状となっています。

このような背景を踏まえ、CIO賢人倶楽部は株式会社レイヤーズ・コンサルティングとIT Leadersの共催で「経営に貢献するITとCIOの役割」と題するセミナーを開催し約100名に参加頂きました。

基調講演

CIO賢人倶楽部の木内会長とレイヤーズ・コンサルティングCEOの杉野によるオープニングに続き、日本たばこ株式会社IT部長の引地久之様より「グローバル競争の最前線に立つために、ITが貢献できること」と題する基調講演を頂きました。

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<講演要旨>

【これまで】
・買収により事業拡大。
・全面アウトソーシングから自社主導に転換(2008)。

【現状】
・グローバルでの競争に直面。
・厳しい競争のもとでの国内でのITコスト削減が重要に。
・自然災害等のリスク対応が必要に。
・JTのIT組織は、国内と海外のデュアルヘッドクオータ制
(ただしガバナンス、インフラ等は共通化)。

【グローバル競争下でITが取り組むべきこと】
・コミュニケーション基盤の刷新とグローバル化。
  →JTでは、事業部門や地域ごとにバラバラだったのを、マイクロソフトのSharePoint、
   Exchangeに一本化し、社外からもアクセスできるようにした
  →メールは誤送信防止のため送信先の画像を表示するようにした
  →リアルタイムコミュニケーションに向けたLyncにも取り組んでいる
  →音声音質が安定しない問題があるが、電話料金を減らせるなどコスト削減効果
   大きかった
・グローバル技術の積極的な活用。
  →使い勝手は良くても日本でしか通用しないITだと、世界の中で孤立
  →グローバルで標準化された良い技術はないか、常に様々な技術動向をウォッチすべき
・グローバル調達によるITコスト削減への取組み。
・セキュリティ。
  →いかに防ぐか。侵入されたあとにいかに被害を最小化するか。
・ITミッションの移行
  →これまでは「維持運用サービス」、あるいは「仮想化」や「案件管理」等への対応
  →今後は「社内シェアードサービス」や「ガバナンス」等、中長期的な変革に
   取り組むべき
・インフラの全体最適化・仮想化の推進。全社で500台以上あったサーバーが150台に集約できた。
・EAやネットワーク整備も重要。

実践講演

続いてレイヤーズ・コンサルティングIT事業部統括MDの有川より「グローバル競争を支える攻めと守りのIT」と題し講演を行いました。

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<講演要旨>

【現状】
・ほとんどの業種で日本企業はグローバル化、ガバナンス強化を推し進めている
・しかしながら日本の製造業の海外売上比率は伸びているが国内売上高の20%程度しかない
・グローバルで戦うことは競争、顧客、自社環境が大きく変わるので「1000倍の環境変化」と向き合うことになる
*競争、顧客、自社環境の変化がそれぞれ10倍の変化と想定し、その掛け目で「1000倍の環境変化」と呼んでいる。

【守りのIT】
・製品、サービスのライフサイクルで徹底したコスト削減を行う
  →開発、生産、販売、アフターサービス等の機能毎に部分最適に陥りやすい

【攻めのIT】
・製品、サービスと顧客のライフサイクルを包括するソリューションを提供して利益を最大化する
  →単品で提供するのではなく契約形態含めてサービス形態が多様化している
  →顧客毎に利益が出ているかを見るために顧客軸でのライフサイクルマネジメントが重要

【グローバル化対応に向けて】
・今まで中国でものを作ってきたが人件費の上昇等で他の国にシフトし始めている。

  →どの国で作るとどの位コストメリットがあるか定量的に見る必要がある
・顧客、製品・サービス、ラインの3軸でのマネジメントが重要
・生産拠点により原価構造が違ってくるので、まずは販管費も含めた単品別利益管理が前提
・その上で顧客別に中長期的売上、利益計画、実績管理を実施する必要がある
  →先行投資(開発費、開拓費など)と撤退コスト(顧客固有の棚卸資産、固定資産
   など)を含める
・ITの取り組みとしてはハード、ネットワーク、アプリのみならずデータ及びビジネスプロセスの標準化などのITグランドデザイン策定が重要

パネルディスカッション

グローバル化対応に向けてはIT組織としても下記の3点を考える必要があり、CIO賢人倶楽部のメンバーでのパネルディスカッションを行いました。

【ディスカッションテーマ】
(1)グローバル化に伴い日本企業が直面するIT課題は何か。
(2)グローバル化を進める中でCIOの果たすべき役割はどう変化するか 。
(3)今後の日本企業に求められるITイニシアティブとはどのような姿か。

【パネラー】
木内 里美様 (CIO賢人倶楽部会長、株式会社オラン代表取締役)
沼 英明様 (ノバルティスファーマ株式会社 執行役員CIO)
寺嶋 一郎様 (積水化学工業株式会社 経営管理部 情報システムグループ長)

※モデレーター  株式会社レイヤーズ・コンサルティング IT事業部統括MD 有川理

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(1)グローバル化に伴い日本企業が直面するIT課題は何か。

沼様
・ノバルティスはスイスが本社であることもあって
 ー国内市場が小さい⇒グローバル展開が必然
  (本国はコンピテンスセンターの役割、ネスレも同様)
 ーグローバル戦略も細分化されておりきめ細かい( Think Global, Act Local )
・日本との考え方(感覚)の違い
 ー内需に頼った経営ができないため、昔からグローバライゼーションは当然という意識
 ービジネスチャンスがあれば、世界中どこにでも進出するマインド
・日本におけるグローバル化の課題
 ーグローバルで標準のITを展開⇒物価の違いにより途上国ではITサービスのコストの負担大

寺嶋様
・今までの取り組み
 ー日本子会社のみ、基幹システムの共通化による情報共有および情報の見える化
 ー海外子会社からは月次の財務情報の収集で充分と考えていた
・今後のグローバル化の課題(アジア、北米、欧州・・・)
 ー海外子会社情報も日本子会社と同様に、基幹システムの共通化による情報共有
  および 情報の見える化

  ⇒基幹システムをERPで統合(アジア15拠点、北米3拠点に導入)予定

木内様
・建設業界の今までの状況と現在の状況
 ー今までは内需に依存
 ー現在は海外展開が必然の状況
・IT面のグローバル化の課題は、グローバルITガバナンス
 ーローカルとグローバルの切り分けが課題
  ⇒ローカルを考えるうえで重要なのは異文化に対する理解

(2)グローバル化を進める中でCIOの果たすべき役割はどう変化するか

沼様
・ノバルティスのグローバルCIOの役割は下記の3つ
 ーバリュー・クリエーション(ビジネスへの価値提供)
 ーオペレーショナル・インテグリティ
 (コンプライアンス(内部統制)、ITの株主に対する情報公開)
 ーコストリーダーシップ
 (運用コスト削減により得た原資を他でバリュー・クリエーションへ投資)
・これからの CIOの役割(注力するべき領域)
 ーバリュー・クリエーション
 ー人材育成

・バリュー・クリエーションの例
 ー基幹システム(SAP)のシングルインスタンス(一元管理)化
  ⇒連結決算の早期化、変更管理の簡素化(=コスト削減)
 ー先進的なEヘルス(モバイルヘルス)への取り組み
  ⇒患者が自宅で飲むことにより自宅で診断が受けられる、チップ入り錠剤の開発等
  (チップに患者の診断情報を蓄積し、その情報を病院に伝送→医療業務の効率化、
   通院時間の削減)

寺嶋様
・グローバル化に伴う、CIOの役割
 ーグローバルのM&Aに対するシステム面での対応
  ⇒システム方針の確立および文書化によるグローバルでの意思の統一
 ーグローバル化に伴う、リスクの管理
   ⇒経営リスク(不正への対応等)の低減
 ー利益創出のための、ITの活用
   ⇒グローバルでの最適生産地の情報(グローバル最適化)

木内様
・これからのCIOの役割
 ーマーケティングへのデータの利活用(攻めのIT)
   ⇒IT部門がバックオフィスからフロントへ役割がシフト
 ー情報漏えいリスクへの対応
  ・外部からのサイバーアタック
  ・内部からの漏えいリスク

(3)今後の日本企業に求められるITイニシアティブとはどのような姿か。

沼様
・これまでの取り組み
 ー生産や開発システムのグローバル化
 ー経理部門のシェアード・サービス化対応
・今後のイニシアティブ
 ーセールス&マーケティングのシステム化及びそのグローバル化
   ⇒営業マン(MR)のノートPCのi-Padへの移行
  ⇒営業情報のデジタル化とグローバル集約
  (→変更管理の容易化、本社へのフィードバックの迅速化)
 ーERP付随システム(経費精算システム等)導入 のため、グローバルでの標準化推進

寺嶋様
・これまでの取り組み
 ービジネス体制およびIT体制の3極化(アジア・北米・欧州)
・今後のイニシアティブ
 ー情報漏えいリスクへの対応
 ーITやITサービスのグローバル調達支援
 ー間接部門のシェアード・サービス化対応(3極毎に実現)

木内様
・これまでの取り組み
 ー親会社主導でのグループ会社全体のプラットフォームの共通化
・今後のイニシアティブ
 ーシステムの利活用という視点でイニシアティブをとる
 ー目的を失ったIT子会社を、グループ内のシェアード・サービス子会社へ転換する