cio賢人倶楽部 ご挨拶

活動内容

「世界で勝つグローバルシステムの要諦」セミナー開催

テーマ:CIOに対する情報発信と提言

更新: 2014年2月27日

日時:2014年2月27日(木) 13:30~17:00

CIO賢人倶楽部では昨年7月9日開催の「経営に貢献するITとCIOの役割」セミナーに続き、グローバル展開を推進されている日本企業の皆様に、検討成果と会員企業の事例のご紹介として「世界で勝つグローバルシステムの要諦」セミナーを開催致しました。当日は約130名のご参加者を頂きました。

アジェンダ

【オープニング】ご挨拶と開催主旨
【基調講演】ホンダ流、真のグローバルシステムの実現
【講演】グローバルシステム構築の要諦
【パネルディスカッション】 世界で勝つグローバルシステムの構築と拡大
    <グローバルシステムの構築と拡大におけるCIOの役割>
    <開発/運用ソーシング戦略>
    <IT組織と人材育成>

【オープニング】
CIO賢人倶楽部の木内里美会長とレイヤーズ・コンサルティングの代表取締役CEO杉野尚志によるご挨拶と開催主旨の
紹介を行いました。

木内会長からはCIO賢人倶楽部の目的と活動、本セミナーの開催主旨を紹介いただきました。
そして、IT利活用のトレンドとして経営のスピード、デジタルマーケティング、グローバル化
が重要であると語られた。

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CIO賢人倶楽部会長:木内里美様

続いて、CIO賢人倶楽部の共同運営者であるレイヤーズ・コンサルティングの杉野CEOが挨拶されました。グローバル化の成功には、5年後を見据えて経営戦略の根幹に合ったITのグローバル化を進めことが大切だと語られた。

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レイヤーズ・コンサルティング 代表取締役CEO:杉野尚志

【基調講演】   ホンダ流、真のグローバルシステムの実現

本田技研工業株式会社 IT本部 本部長代行 参事 有吉和幸様より、グローバル企業、ホンダの
グローバル事業を支えるICT活用とIT組織の取り組みについてご講演を頂きました。

<講演要旨>

Hondaの会社概要と事業展開
   2020年ビジョン “良いものを早く、安く、低炭素でお客様のお届けする”
   二輪事業:1591万台、海外生産比率98.8%、四輪事業:411万台、
   海外生産比率75%(2012年)
Honda流TQM
   ・課題を見つける(Draw-See-Think) 「こうしたい・こうありたい」から知恵を出
    して仕事を進める
   ・課題を解決する(PDCA)事実に基づくPDCA–三現主義(現場・現物・現実)

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Honda IT門の変革と取組

   2005年 IT部門に意識改革
    「開発効率化向上」から「開発目的達成」への取り組み
   2012年 IT本部へ昇格
     理念:情報と技術を駆使して、ビジネスイノベーションを創出、
        企業競争力を高め続ける

     IT基本構造:グローバルで素早く対応できるIT構造への革新
       開発効率からサービス提供の追求=>ビジネス即応力の確保
       極自立からグローバル連携運用=>IT資産効率の向上
     IT部門のグローバル体制の再編成
       全社(グローバルISマネジメントボード)・地域(世界6極)
       ・拠点(現地法人)の3階層

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新たな役割

  インターナショナル(地域軸)からグローバルオペレーションの実現へのIT貢献
   ・事業軸最適システム構造への転換
    四輪:高い拠点機能の強みを活かし情報連携を強化
    二輪:シンプルなシステム構造へ転換(ERPでプロセス刷新)
   ・Global Honda Data Management
    マスター・業務データを“つなぐ・ためる・みせる”
   ・Honda グローバルICT基盤
    2013年末までにグローバルインフラ統合を完了

【講演】 グローバルシステム構築の要諦

続いて、レイヤーズ・コンサルティングのIT事業部統括マネージングディレクター有川理よりコンサルティング事例を交えてグローバルシステムのデザインと構築のポイントについて講演を行いました。

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<講演要旨>

日本企業のグローバル化に求められるものは?
  モデルと組織設計 :事業(製品) X 地域(市場)
  経営管理の階層:ビジョン・戦略・プロセス・評価
  プロセス設計: 機能毎の強力な横串管理
グローバル経営管理の課題と方向性
  主管部門のガバナンス体制強化、
  データ横串管理の強化(例:コード、会計基準)、
  業務標準化とSSC(シェアードサービスセンター)化、
  決算日程の短縮化、業績評価の見直し

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グローバルシステムの成功アプローチ

   ・グローバル経営管理態勢の構築
     1.グローバルでプロセス統一
     2.シングルインスタンスでの システム運用
     3.シェアードサービスセンターへ業務集約
   ・シングルインスタンスのメリットとデメリットを理解する
   ・グローバル事業展開の形態に適したモデル
      (グローバル最適地生産 vs 地産地消型)
   ・グローバル標準化の範囲の考え方
     (例:調達・生産・会計は共通化、営業・販売は地域性考慮)
   ・マスター統合の考え方
    (例:段階的な統合ステップ)
   ・チェンジマネジメント
    (ASEAN等の多様な地域には特性に合わせてきめ
    細かく対応)

グローバルIT組織の在り方
    (グローバル対応度に応じて3 つのステージ)
     拠点分散型・リージョン集約・グローバル統合

グローバル人材に必要な能力
     「順応力」、「戦略・マネジメント力」、
     「コミュニケーション力」、「人間力」

                                   ページ上に戻る

【パネルディスカッション】 世界で勝つグローバルシステムの構築と拡大

最後に、CIO賢人倶楽部の参加企業によりパネルディスカッションを行いました。

(パネラー)
木内 里美様 CIO賢人倶楽部会長
有吉 和幸様 本田技研工業株式会社 IT本部 本部長代行 参事
重松 直様  東レシステムセンター 顧問
深作 祐子様 ノバルティス ファーマ株式会社 情報システム事業部
       マーケティング情報システム推進部 部長
(モデレーター)
有川 理   レイヤーズ・コンサルティング
       IT事業部統括マネージングディレクター

 <グローバルシステムの構築と拡大におけるCIOの役割>

深作様:ノバルティスグループでは、CIOはIT部門トップというだけではなく最高情報責任
    者。経営層とのコミュニケーションが重要な役割であり、同時にグローバルシステム
    といった大きなプロジェクトの推進ではメンバーに対して夢を語り推進すること、
    関連する事業部門責任者を取りまとめることも重要な役割。

重松様:CIOに求められるは、方向を決める構想力、それを実行する包容力と考えている。
    東レは化学という業種の性格上、地産地消型の生販であり、連邦型経営が大きな
    枠組み。よって本社IT部門としては土台作りに力をいれてきた。土台とは目的や
    役割、ルールや技術の標準化、シンプル化、評価等、これがしっかりしないとグ
    ローバル化は難しい。実行においては、全体最適と部分最適、分散と統合をどう
    使い分けていくか。さらに実行においては、常に危険予知と弐の矢、三の矢を用意
    しておくことが大切。

有吉様:CIOの役割は全体最適側にあると考えている。IT部門の長とCIOは違う。ITは経営を
    支援するものではなく、経営の中にあるものだ。“支援“と考えている限りは経営から
    認められない。ITの具現化において一段高い視点で企業の競争力のために考えるのが
    CIOだ。

木内様:CIOには、今日、経営の視点で見ることがより強く求められており、経営改革と業務
    改革への関与度が強くなっていると感じる。そして、その領域はお金を稼ぐフロント
    側で事業のグローバル展開に合わせてどんどん広がっている。CIO自体も海外出張が
    非常に増えている。

深作様:本社と現地のCIOのコミュニケーションはWebカンファレンスも多いが、Face To
    Face も重要で、世界中を飛び回っている。

重松様:CIOのコミュニケーションという点では、アジア地域では10年前からアジアシステム
    会議を行っている。目的は現場の人とのコミュニケーションと各地域の経営責任者
    (統括会社の責任者)と話をすること。3年前からアメリカ、昨年からヨーロッパも
    始めている。

有吉様:以前は、地域代表が半年ごとに日本に集まって課題を報告。最近は、課題を解決する
    ための会議に変えてきた。今では、最終合意をとるための会議に位置づけを変え、
    半年に一回実施している。

                              ページ上に戻る

 

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<開発/運用ソーシング戦略>

深作様:システムをグローバルで統合してきており、グローバルでのソーシングや開発は
    1か所に集約してきている。ローカル要件をローカルで開発すると全体でのコストも
    高く、コントロールが利かない。日本で要件・仕様を作っても、開発はインドのオフ
    ショア等で実施している。標準化を最大化してローカル要件は抑え、本社IT部門のガ
    バナンス下で開発を実施している。運用面では、3層でヘルプデスクを設けており、
    ファーストレベルでアジア、ヨーロッパ、アメリカ、インド。
    セカンドレベルをローカル。エキスパートを本社という考え。
    ソーシングはグローバルベンダを選定することが多い。

重松様:東レはそこまではいっていない。ソーシングはQCDがベストになること、ノウハウが
    継承できることを重視。開発から運用、運用から開発、そして、人材育成の場を無く
    してはいけない。全部をだすと技術の維持、コストの見積ができなくなる。一方、海
    外は現地で運用ができることを条件にしている。また、これまでも日本のシステムを
    現地に適用したが、機能が多く複雑で現地に合わないことも多く、今は無理に持ち込
    まない。例えば海外の生産は物量(製品の入りと出)と品質だけを見ているなど。

有吉様:国内ではベンダーロックインをさけるためにマルチソーシングにしている。一方、海
    外では膨大な取引先ベンダがあり、これを横の連携ができるところに絞っている。
    先進国側ではシステムのコストダウンになっても、新興国で開発した方がもっと安く
    なる。すなわち、グローバルシステムに乗るとコストが上がることも起きる。開発も
    アジアに移管などコストをより安くすることが必要。また、市場の大きい中国、アメ
    リカにはSAPが入っておらず、ノウハウのアンバランスもあり、その辺に対して、
    どう進めていくかということを埋めてもらえるグローバルベンダを期待して
    選定している。

木内様:ソーシングの目的はコストダウンと価値創造だ。価値を作り出せる仕事はインソース
    する見極めが必要。コストだけを目的に、より安い場所を求めてアウトソーシング
    することは根本的に間違っていると思う。そこには共生という発想がないから、いず
    れ破綻する。もっと削減できるコストは多い。運用を外に出してはダメ。運用から
    経営、事業、業務、次の改善が見えるからだ。運用は非常に重要。

<IT組織と人材育成>

深作様:人材育成のためのロールというピラミッドがあり、その頂点はストラテジックプラン
    ナで、非常に重要な役割を担っている。ストラテジックプランナーは地域・事業の
    組織を横断してWin-Winの関係を作り出せる、大変高いコラボレーション能力を持っ
    ている人材。グローバル方針に対して、ローカル側の要望をきちんと伝えて交渉でき
    ることが重要になっている。育成方針はITと事業部とのグローバルなローテーション
    としている。 前のテーマに戻るが、運用についてアウトソースしているが、変更管理
    についてはIT部内が担当。ビジネスの要素が詰まっている部分に関しては社内に残
    て内製。SAPについてはグローバルでアウトソースしている。50くらいのベンダが
    いるが、そこにハブベンダを作り、大きいベンダ1,2に絞るようにしている。
    運用については変更管理を押さえ、IT部門としてはプロジェクトマネジメント、クオ
    リティマネジメントというところに資源を集中するというような形で進めている。

重松様:以前は東レなど事業各社と東レシステムセンターに其々150名おり、部課長・担当間
    での摩擦がありロスも多かった。よって運用の戦力をまとめて、東レ本体にグローバ
    ルと自社担当がそれぞれ約10名、各社に5名位を残して、大半の人材をシステムセン
    ターに集めた。戦力は中途半端に分散してはいけない。運用の 役割をポジティブな表
    現にして役割期待を明確化した。人材育成については、学ぶことを絞りこむことが大
    切と考え、標準化、シンプル化を推し進めて効果の高い教育を目指した。また、経験
    の場を広げるために現場とローテーションをしているが、現場に出ると重宝されて戻
    らないケースが多い。中堅には、関係会社にITの責任者として出向させている。語学
    が重要ということで、若手は1年半の海外研修を3年前から開始。アメリカの関係会社
    へ1年半の研修名目で出している。語学の問題もあるが、日本人は日本流しか知らな
    いので、海外の文化、ビジネススタイル、コミュニケーションの仕方などを学ばせて
    いる。

有吉様:IT部門からユーザ部門に行って、またITに戻る経験を持っているが、みんなが行ける
    わけでもないし、誰もが戻ってこれるわけでもない。そういうパイプを作るのは難し
    いと思うが、失くしてはならないパイプだと思っている。もうひとつのメリットは、
    ユーザ部門に行った時に、外からITが見れること。Whatの話がユーザとできるよう
    になって、Howを実現することを学ぶ場と考えている。4月の組織改正でIT戦略部隊
    を戦略とグローバル管理部隊に分け、サプライチェーン担当と生産系の担当の部とそ
    れ以外を統合する。機能別にサイロ化していると、購買といっても工場現場など横の
    連携がどうしても必要。ITの中でのサイロ化を防ぐということで部を統合する。巨大
    になるので今まで以上に課長に権限を与える方向。また日本の組織を日本とグローバ
    ル本社に分ける。本社機能は、事業軸を強くする。事業の先にマトリクスがあるとい
    う形にして、それを支えるIT部門という形に変えていく。人材育成はチャンスを与え
    る、というのがHondaの考え方。チャンスは均等で、あとは評価していく。社内で
    は、3割人事、4割人事を行っている。3割くらいの能力あれば、後は立場を経験して
    作る。早期にチャンスを与えて人を育てていくやり方。
 
木内様:IT組織の機能は4つ。企画、実装、運用、ベンダーマネジメント。そして、親会社が
    グループのIT組織の面倒をみるべきで、組織を細分化すればするほど無駄が出てく
    る。機能を切り分けた上で、大事なのはガバナンス。グローバル人材は、各国の文
    化、風土、国民性を受け入れる柔軟性がないとうまくいかない。日本で優秀でも海外
    で優秀とは限らない。後は、人間力、人格、成長意欲を持っている。

 

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