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イノベーション、まずは原点回帰から

更新: 2014年3月1日

イノベーションとは革新/改革であり、改善とは異なる。自動車に例えると、新モデルあるいはフルモデルチェンジがイノベーション、マイナーチェンジが改善と言えるだろう。周囲への影響レベルが数段高いのが、イノベーションだ。

改善では現場・現物・現実で問題を明らかにし、対策案を考え、実行して解決を図る。対象・目的・効果が明確になっている。

これがイノベーションとなると創造的な破壊となる。現状を否定しビジネスモデルの刷新や技術革新により根本的な対応を行う訳で、実践は容易ではない。

領域の広さから焦点があいまいとなり、“○○システム再構築”や“○○システム刷新”など、名前だけの対応策に陥りがちだ。

目的が明確になっていないため、システムの開発が目的のように見えたり、システム構築だけで課題を解決できるような企画となってしまうのである。

多くの場合、多額の投資が必要なためビジネスとしての効果を明確に示さなければならない。対象領域が特定の領域に留まっているならまだしも、複数領域やグローバルとなると課題の大きさや影響領域を事前にすべて見通すのは困難となる。加えて、投資金額の精度、これも難題である。

そして対象・目的・効果がはっきりしない企画であるがゆえに、提案の場で、そのシステムを刷新したら何が変わるのか?何が良くなるか?投資効果は?というような質問が、矢のように浴びせられることになる。

ことほどさように、イノベーションは難しいが、ではどうすればいいのか?

 

昔、新任管理職研修でマネージメントの考え方を4つ教わった。

1 まず夢ありき

  夢の実現プロセスのリードこそマネージメントの使命

2 大事な事はしっかりとした方向性

  正しい方向の提示こそマネージメントの責務

3 一本意志の通った経営を目指せ

  理念先行型経営のすすめ

4 原点を大切に

  原点と本筋に基づく経営

イノベーションへの取り組みもこれと同じだと思う。

イノベーションの目的を“大きな夢の実現”と考えると、夢を如何に理解させるかがマネージメントの役割となる。

そして判断に迷ったとき、困ったとき、重大な岐路にあって、ものが見えなくなったとき、大事なことは一度、現状を離れて、原点にたち帰って考えてみることだ。

イノベーション=創造的破壊=のアプローチは全体の軸がはっきりしている場合は良いが、原点に立ち帰り原理・原則から考えるという、一見、保守的なアプローチの方が問題認識や価値観の共有が図れる。

経験的にも、いきなり創造的破壊を提唱するよりも原点回帰の方が今までのノウハウも生かせる上に、イノベーションのスピードも上がる。

そのために大切なのは夢を原理・原則・原点回帰で描くこと。そして3現主義(現場、現物、現実)で現状を把握することだ。

それをやれば「こうしたい(=夢)のだが、そうは言っても現状はこのレベルなので、こういう方向性で現状から夢を実現させる」となり、対象・目的・効果がはっきりし理解や議論が深まる。

熱い志を持ち、「そうは言ってものシステム」を起点に、「システムとはこうあるべき」へと変えていく。これがイノベーションの最短ルートだと思う。この想いがIT部門の原点回帰だ。

元 本田技研工業株式会社
IT本部 本部長代行 参事
有吉和幸