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CIO、世間でどう認知されているか?

更新: 2014年10月1日

筆者はCIOではありませんし、もちろん「賢人」でもありません。ですから今回のコラムは身の丈に合ったテーマでご容赦頂き、少し軽い感じでお付合い頂ければと思います。

「CIOという言葉はどのくらい認知されているのか」。こんな疑問をもったことはないでしょうか?言うまでもなくITを専門とする人たちや、IT専門メディアではごく普通に使われています。でも世間一般にはどのくらい浸透している言葉なのか、ふとそんな疑問が湧きましたので調べてみました。

まず一般紙の読売新聞に掲載された記事です。最初にCIO関連の表記が使われた記事は、2000年1月19日付でした。内容は「アメリカ一極時代の特集」で、医療やスポーツなど様々な分野で世界をリードし始めているというもの。本文中に登場する人の肩書きとして「最高情報責任者」という語句が使われました。ただし、CIOという表現は使用されておらず、特に用語の説明や解説もされていませんでした。

同じ年の3月21日付では、三和銀行、東海銀行、あさひ銀行(いずれも当時)が設立する予定の持ち株会社に、国内大手銀行で初めてIT戦略の統括者となる「CIO」(最高情報責任者)を設置するというニュースが報じられています。同記事は「欧米ではIT戦略を効率的に進めるために、CIOを設ける金融グループが増えている」とも伝え、CIOの役割については、システムの構築や運営、投資管理のほか、新しい業務に関する戦略立案などIT関連の全業務を統括するものであると説明しています。

2004年の後半から2005年末にかけては、中央官庁や地方自治体のIT調達にまつわる不透明な支出や、東証のシステム障害・大量誤発注にまつわるニュースの中で、CIOの必要性や役割などが20回ほど取り上げられました。ITの専門知識を持った民間出身者が、県庁などの地方自治体で活躍する例が増えているというものや、東証の西室泰三会長兼社長が、最高情報責任者(CIO)を公募し役員待遇で迎えることを表明したというような内容です。

まとめると2000年代初めに登場し、2000年代半ばには定着したかに思えます。では最近ではどうでしょうか。直近の一年間(2013年9月1日~2014年8月31日)の記事から、「CIO」を含むものを探してみました。すると該当する記事はたったの2本だけ。しかもそのうちの一つは、西村泰三氏の半生を紹介する記事で、東証会長兼社長時代に外部から初めてCIOを招いたというものでした。ニュースとして扱われたのは一回だけで、それも全国ニュースではなく、宮城県教育委員会が学校CIOを設置するよう呼びかけているというローカルニュースだったのです。

ちなみに同じ期間で「CEO」が登場する記事は251本ありました。CIOに比べ、新聞に掲載される機会が多いことと、肩書きとしても最高経営責任者(CEO)は既に定着していることを示していると思います。

日経電子版でも調べてみました。過去一年間を対象に「CIO」という言葉で検索すると114件がヒットしました。最高投資責任者など、違う意味で使用されているケースも含まれる可能性がありますが、読売新聞とは大きな違いがありました。日経電子版では肩書き表記にCIOを使用するケースが一般化しているようです。しかし、「CEO」を検索すると2827件もありました。

最後に「CIO&CEO」を検索してみました。CEOと一緒に登場する記事では、経営に深く関わる内容が扱われていると期待したためです。ヒットしたのは26件。そこから異なる意味で使われているもの11件を除くと、単なる人事情報が13本で、通常の記事は2本という結果でした。ガートナーがIT部門向けに翌年の展望について行った講演に関するものと、標的型攻撃を受けるケースが非常に多くなっているというセキュリティー関連の記事です。期待に反して経営的な内容ではなく、ITそのものがテーマのニュースでした。

裏を返せば、ITやIT部門の企業への貢献度が見え難いということでしょう。簡単な記事調査ではありますが、ここまで見てきた結果も、残念ながらそれを裏付けていると言えるかも知れません。一方、経済産業省が毎年実施している情報処理実態調査では、平成24年におけるCIOの専任・兼任の設置率は29.6%に留まりました。設置しない理由は「必要ない」が48.1%と半数近くを占めます。

(参照→http://www.meti.go.jp/statistics/zyo/zyouhou/result-1.html)。

しかしながら、企業経営を高度化するためにITの果たす役割は以前にも増して大きくなっています。CIO賢人倶楽部の設立趣意書には「CEO、COO、CFOを強力に支えるCIOの社内外における地位向上を実現し、企業経営へ貢献する」とあります。そのためにはCIOの認知が欠かせません。当倶楽部の役割は重く、大きいと考えています。

株式会社読売新聞東京本社
制作局技術一部 部長
小林 俊樹