cio賢人倶楽部 ご挨拶

オピニオン

CIOに求められる、時代を見極める力

更新: 2016年2月1日

CIO賢人倶楽部のオピニオンを最初に書いたのが2014年1月だから、2年ぶりにリレーが回ってきたことになる。この2年の間にも情報通信環境は大きく変化している。

クラウドは実装環境としてその地位を確固たるものとしてきたし、レコードシステム(記録主体のシステム)からエンゲージメントシステム(関与主体のシステム)へ、あるいはバックからフロントへと言われるように、システムの目的がコスト削減や合理化一辺倒から増収増益のための顧客ターゲットへ変化した。IoTも当たり前のように言われ出し、着実に実装が進む。機械学習、ディープラーニングなどのAI(人工知能)も「夢を現実に」を感じさせるレベルになってきた。

一方、時代はVUCAだと言われる。VUCAとはVolatility(変動性)、Uncertainty (不確実性)、Complexity (複雑性)、Ambiguity (曖昧性)の頭文字を重ねたものだ。予測がつかない事象が、政情にも経済にも自然現象にも容赦なく起こる。先を読むのが難しい時代であることをよく象徴している言葉である。

この先の読みにくい時代にあって、当然CIOの役割も変わる。今まではともかく、マーケティングやブランディングにも知らぬ顔など出来なくなってきた。情報通信技術が関わるすべての企業活動に関与する必要がある。技術の専門性を求められているからだ。

したがってCIOはビジネス環境の変化と情報技術の進化に適時対応できなければ役割が果たせない。そのベースにあるのは「技術」であることは間違いない。技術をベースに変化する時代の要求するものを見極め、技術の適応性を判断してビジネスに取り込んでいく役割がある。時代を見極め、技術を見極めていくにはどうすればいいか。筆者の方法を紹介しよう。

 ① 関心を持つ

先ず、何事にも関心を持って取り組まなければ突き詰めること、見極めることは出来ない。関心は行動のモチベーションである。好奇心は関心のアンテナである。アンテナを張っていなければ世の中の変化を読み取れない。

②トレンドを見る

何事にもトレンド(傾向、趨勢、動向、流行り)がある。最近はテクノロジーの進化でシンギュラリティ(技術的特異点)が起こるという未来予測が盛んになっているが、技術も事象もトレンドを示しつつ変化していくものだ。外挿予測が可能な線形変化もあれば、ある制約を解決して不連続的に変化するものもあるが、いずれも背景やトレンドがある。クラウドもビックデータもIoTもしかり。コンピュータとネットワークの地道な研究や発展の過程を見ているとわかりやすい。

③体感する

見極める上で最も重要な要素かもしれない。いわゆる現地・現場・現物主義による体感である。聞いただけではわからない。ネット情報ではわからない。予備知識は持ちつつ、実際に見る、触る、試す、現場に行くという体感によって腹落ちすることは多い。

④根拠を求めつつ思考する

物事をロジカルに考える。鵜呑みにしない。流されない。耳障り良いことは疑ってかかる。氾濫する情報から丁寧に真実を見つけていく。要するに「批判的思考」で考える。

⑤仮説・検証をする

仮説・検証の最もよい方法は「やってみる」こと。実験もやってみることだし、新製品は使ってみることだし、プロトタイピングもやってみることだ。それは闇雲にではなく、十分に思考を繰り返して結果予測を立ててからということになる。

CIOほど多彩で変容な役割はない。変化していく市場や環境やリスクばかりでなく、根幹となる技術の変化を見極めていかねばならないからだ。だからこそやり甲斐もあり、達成感もある。そのワクワク感こそご褒美だと考えるといい。

 

CIO賢人倶楽部会長
木内 里美