cio賢人倶楽部 ご挨拶

オピニオン

デジタル・トランスフォーメーションの渦中で考えること

更新: 2016年3月3日

 最近、多く聞かれる言葉に「デジタル・トランスフォーメーション」があります。皆さんは、これをどう捉えているでしょうか?

 時代についていくためというか仕事上必要だったのですが、筆者が周囲に聞いてみたところ、10人いれば10通りの答が返って来ました。カタカナ用語ゆえの分かりにくさだけが理由ではありません。そうではなく、これまでのITによる情報化の次元を遥かに超えた形で影響を及ぼしているからに他ならないと考えられます。

 一般に、デジタル・トランスフォーメーションとはデジタル技術を駆使して、あるいはデジタル技術を与件として、あらゆることをトランスフォーム(変化、転換)することを意味します。既存のビジネスや組織のあり方、仕事の進め方、情報を集めたり何かを学んだりする方法、あるいは生活のあり方をデジタル技術を前提に、全面見直しするわけです。

 「もし50年前にソーシャルやモバイル、クラウドが存在したら」と想像を巡らせると、その必然性は明らかです。企業の組織も働き方も会議も何もかもが、今とは全く違うものになっていたでしょう。ソーシャルもモバイルもなかった時代は、階層型の組織や頻繁な会議が必要でした。なぜ今も会議が必要なのか・・・。

 と偉そうに書いていますが、筆者にとって経験が浅い分野でもあったため、ほぼ無作為に“デジタル”について学ぶために情報収集をしてきました。いまだ消化不良のまま情報が増え続けておりますが、デジタル・トランスフォーメーションについて改めて感じるのは、とても当たり前に聞こえるかも知れませんが、ビジネス課題、現場、顧客、その先にいる消費者の現在、将来のニーズの理解が、IT部門としてこれまで以上に重要になっているという事実です。

 ビッグデータ、ソーシャル、IoT、モバイル、さらにはマルチチャネルマーケティング、クローズドループマーケティングなど様々なテクノロジーに目を奪われがちですが、これらは目的を果たす手段であり、過程です。大事なのは、その先にいる顧客の体験をデジタルで実現化すること。この目的をしっかり認識しなければならないと実感しています。

 何よりも顧客自身がデジタル・トランスフォーメーションの渦中にあります。我々がきちんと対応すれば顧客との接点を増やし、従来はで不可能だった体験を提供したり、顧客に行動の変化を起こしてもらうことが可能です。おこがましいようですが、顧客の生活の質を向上していただくようなサービスの提供もできます。でも、実践や実現は簡単ではありません。

 ITのプロとして貢献するために、これまでは特定のソフトウェアやビジネスの経験と知識、プロジェクトマネジメントの経験などが重要なスキルでした。しかし、たとえばデジタルマーケティングでは、いままで付き合いがなかったエージェントがベンダーとして新たに加わります。そうしたエージェントとアジャイルな形で新たな顧客の体験をイメージしながら協創するといったことは、これまでのメソドロジーで固められた手法に慣れてきているIT部門にとっては、新たな挑戦となることでしょう。

 そうであっても顧客の現在と将来のニーズを理解し、必要なテクノロジーをつなげるアンテナを持つこと、そして全体を推進できるリーダーシップ、コラボレーションの要素が持つことが、これからのIT部門には重要になると考えます。デジタル・トランスフォーメーションによって、人間の行動や感情を理解するというデジタル化できない部分の重要性が浮き彫りなることが、私には面白く感じています。 

 今後もデジタル技術は進化と変化を継続します。ですから我々も日々、トランスフォーメーションすることが日常となります。変化をしてようやく現状維持ができるのですから、成長するためにはどれほど変化をしなければならないのでしょうか?そう考えると大変なようですが、デジタル・トランスフォーメーションを苦労に思うのではなく、楽しみたいと思います。

ノバルティス ファーマ株式会社
情報システム事業部 
コマーシャルIT & ビジネスパートナー部 部長
深作 祐子