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ワークスタイルの変革は個々人の自立と自律から

更新: 2017年2月25日

ワークスタイルの変革も耳慣れた言葉になってきた。2014年から毎年7月には「ワークスタイル変革EXPO」というイベントも開催されるようになり、Googleトレンドで検索すると毎年7月に明らかなピークが現れている。

商業ベースになったワークスタイルの変革には、いつもどこかしっくりしない違和感を覚える。「ワークスタイルの変革」で検索すると、ITサービス会社の宣伝記事が数多く並ぶのはその一例だ。提供するサービスやテクノロジーを導入したらワークスタイルが変革できるような記事が多い。しかしICTや情報システムを導入しても顕著に時間あたりの生産性が改善するとか労働の質が上がるとは思えない。実際にこの20年間を見ても日本の時間あたりの労働生産性は改善されていない。

そもそもワークスタイルの変革の目的が曖昧なのだ。事例で示されるのはフリーアドレスやモバイルワーク・テレワークなどオフィス労働環境の改善であったり、フレックス労働制・裁量労働制や育休・介護などに配慮した人事制度の変革であったり、ダイバーシティやマネジメントスタイルの組織風土の改善であったりする。これはら全て手段でしかない。ワークスタイルの変革が企業の活動であり企業は人なりと考えるなら、目的は労働モチベーションと生産性を高めて企業が成長することだろう。

一方ではブラック企業だ、長時間労働だと日本の労働環境が問題視されている。一部企業での過労死問題などが契機になって、国も『働き方改革』を打ち出してきた。働き方改革には一億総活躍、女性活躍、再チャレンジなど多様な働き方を促すキーワードが並ぶが、背景にはいつまでも生産性が上がらない日本の労働と確実にやってくる生産労働人口の減少という深刻な経済問題がある。

長時間労働も問題だが、それ以上にパワハラだとか嫌がらせだとかサービス残業だとか名目だけの管理職(管理監督者ではない)への時間外不払いとか、労働環境の悪弊が問題なのだと思う。強制的に長時間労働を止めさせても、無駄なワークを排除しなければ本質的な問題解決にはならない。月末の金曜日を15時で退社するプレミアムフライデーを推奨しても、他の日にしわ寄せがくるのでは意味がない。短時間労働で労働生産性を上げるには労働の質の改善が必要であり、労働モチベーションの向上が必須だ。

時間外労働の対象にならない管理監督者の労働形態をみると、ワークスタイルの変革につながるヒントがある。それは仕事に対する主体性と裁量である。管理監督者は労働時間も出勤や休憩や休日なども自分の裁量で決めることができる。必要な時は長時間労働もする。求められるのは成果であり実績だ。

ワークスタイルの変革は経営サイドからみればオフィス環境や人事制度や組織風土を変革して多様な労働形態を容認し、働き心地を改善し、労働に対する責任とモチベーションを向上させる経営課題であるが、その本質は制度ではなく多様性をマネジメントする運用にある。

そして働くサイドからみれば容認された多様な労働環境を活用して自覚と主体性を持って職務にあたり、自らが自立し、自律することが本来の姿だろう。特に生産性が上がっていないホワイトカラーが自分の裁量でワークライフバランスのとれた働き方を選択し、今まで以上に成果をあげることが本来のワークスタイル変革であると思う。

CIO賢人倶楽部会長
木内里美