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After/Withコロナ禍で国内ITベンダーに求められること

更新: 2020年11月1日

 コロナ禍を経験し、世の中の人々・企業・団体は新しい様式を構築する必要に迫られた。今も変化の渦中にある。そんな中、新しい様式を構築するためにも、ITの役割が増々重要になっていることは、誰もが認めるところだろう。では当社のようなITベンダーはどんな役割を求められ、あるいは果たすべきなのか?この点を考察してみた。

 まず世の中の変化について、考えてみたい。4月に発出された緊急事態宣言がトリガーとなり、多くの企業や学校において、Web会議システムなど各種のコミュニケーションツールによるリモートワーク・リモート学習が広く浸透した。生活面では、消費者の外出控えによりリアル店舗での買い物や外食が減少する一方、ネット通販やデリバリーサービスの利用が急拡大した。

 パソナの淡路島本社移転など、企業や人が大都市中心部から大都市近郊や地方へ移転・移住する動きも出始めている。今後は、複数職業・企業への従事や労働時間帯の自由選択といった変化も含め、時間・空間に縛られないワークスタイルやライフスタイルといった社会の多様性が、否応なしに広がっていくことが想定される。

 このような変化が進む中で、テレビ会議システムやコミュニケーションツールといったITインフラはGAFAのようなグローバルIT企業が提供するサービスがほぼデファクトとなっている。国内のITベンダーが新たにこのレイヤーを担うことは難しい。ではどこに活躍の場があるのだろうか。筆者は、デファクトのITインフラ上で、企業活動や個人の生活をより多様かつ豊かなものにする、国内事情に合ったITサービスを提供する役割があると考えている。

 もう少し具体的に説明したい。国内ITベンダーが取るべきアクションは次のような課題への対応である。

① デジタル格差の解消

 「デジタル格差」とは、IT(特にインターネット)の恩恵を受けることのできる人とできない人の間に生じる経済的な格差を意味する言葉だ。個人レベルでは所得差や様々なサービスへのアクセス、企業においては大企業と中小企業間での格差が社会的な課題として、すでに認識されている。今後、企業や人の移動、移住が加速した場合には、新しく生じるであろう様々なコミュニティ内でも格差が生じると考えられる。

 そこで国内ITベンダーには、安い・早い・簡単なデジタルサービスを提供することで、これらの格差を解消し、社会全体の活性化と新しい社会の創造に貢献することが求められる。特に、より個人に焦点を当てたデジタルサービスの重要性が増し、シニア層の生活の活性化、障がい者への生活サポート、子供・学生への教育支援等の需要が高まるのではないだろうか。

② 地方活性化

 時間と空間に縛られない社会の多様性を実現するためには、大都市と地方都市の間にある垣根や格差が無くなり、社会がよりフラットになる必要があるだろう。国内ITベンダーには、地方への移住・地方在住者の採用/勤務等をさらに促進し、地方活性化に貢献することが求められると考えられる。前述の教育支援も含め、これらの活動を通じて国内のデジタル人材の採用・育成の裾野を広げ、活躍の場を拡大することにも寄与できるのではないだろうか。

③ 行政デジタル化への貢献

 コロナ禍における行政の施策は、伝達・申請・実施という一連のオペレーションを広く国民に対して迅速かつ滞りなく間違いなく進める必要があった。ところが周知の通り、期待通りに進まない面が少なからずあった。この課題を解決するためにデジタル技術が果たすべき役割は大きい。菅首相が旗を振っているが、ともあれ行政デジタル化は急を要する。国内ITベンダーには、技術や規格の統一化や行政に対する提言活動、デジタル化を実現するために不可欠な強固なセキュリティ基盤の提供が求められるだろう。  弊社では近年、ERPやAI、RPAやローコード開発といったIT分野における高速化・自動化・簡素化の方向性を志向しており、また、障がい者サポートのIoTデバイスの開発にも取り組んでいる。今後、こうした技術や取り組みを上記の課題に適用し、新しい社会創造ーーニューノーマルの実現ーーに貢献していきたいと考えている。

情報技術開発株式会社