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コロナ禍のなかで高めたい企業のダイナミック・ケイパビリティ

更新: 2021年9月1日

 世界中が新型コロナのパンデミックに襲われて、すでに20ヵ月が経過する。その間に様々なワクチンが開発されたが、ワクチンによる抗体が予想以上に短期間に劣化することが分かってきた。ワクチン接種をしても、変異種に感染するプレークスルー感染がかなりの率で起こることも分かった。

 結局、ワクチンだけでコロナ渦の終息は期待できない。感染症研究者の中には、「これから2年から5年ほど続くのではないか」という見解もある。ワクチン接種を先行したイスラエルや英国やアメリカの感染再燃をみると、そう思わざるを得ないものがある。当初1年くらいは覚悟したものの、これほど長期になると誰が予測できただろうか?

 Withコロナ、Afterコロナを、感染予防の要否で区分するとかワクチンの接種状況が進んだかどうかで区分していたが、実態としてはWithコロナがかなり長期になるという見通しになってきた。2020年の今頃は、アセットマネジメント会社など経済の専門家は2021年のどこかで経済回復するだろうと予測していた。少なくとも日本はそのような状況にはなっていない。むしろ国費を大きく消費し、国の経済体力を大いに消耗させた。

 Afterコロナは遠い先になりそうで、いまAfterコロナを考えるより、長期化するWithコロナでやれることを最大化する方が賢明だ。だが経済体力の回復はマネーゲームでどうこうできるわけがなく、民間企業の持続可能な活動で生産性を高めるしかない。その一つの要素がDX(デジタル・トランスフォーメーション)だが、よくあるデジタル技術を活用する程度ではなく、企業体質を変えないとDXも容易ではない。変えるべき企業体質は、変化適応能力である。

 戦略的な経営の概念に、”ダイナミック・ケイパビリティ”がある。最近、急に出てきたわけではなく、20年以上前に最初の定義が示された。理論形成のためにいろいろな学者が研究を重ねているが、ビジネス社会では難しく考えることはない。割り切って表現すれば、洞察力を効かして変化を先読みし、俊敏に変化対応していく組織能力のことだ。

 ビジネス社会では常に言われ、意識されている概念でもある。DXが進まない会社はそもそもダイナミック・ケイパビリティがないと言っていい。変化に対するセンサーもなければ、リスクに挑戦する意思も、さらには価値を創出する力もスピードもない。基礎能力がないのに、身の丈以上のことを望むのは無理がある。

 コロナ禍は世界を襲った未曾有の社会変化だ。この変化の真っただ中にいる今こそ、基礎能力を高める良い機会だ。変化がダイナミックなのだから、対応する力もダイナミックでなければならない。IT/デジタルで言えば、アジャイルやDevOpsの能力である。ぜひダイナミック・ケイパビリティを高める施策を検討し、実行してもらいたい。

CIO賢人倶楽部 会長
木内 里美