cio賢人倶楽部 ご挨拶

オピニオン

生成AIを企業で活用するために必要なこととは?

更新: 2023年8月1日

ネット上などにある大量のデータを学習し、それに基づいて新しい文章や画像、音楽などを自動的に生成できる人工知能、生成AIが大きな関心を集めている。対話型で質問に答える「ChatGPT」や、いくつかのフレーズから画像を描いてくれる「MidJourney」など手軽に使えるサービスが登場。個人はもちろん、多くの企業や組織で導入が始まっている。

これら生成AIは、複雑な質問に文章で回答したり、プログラムのコードを作成したり、統計データを分析したりできるので、ソフトウェア開発、マーケティング、商品開発、顧客価値向上、事務合理化など、幅広い業界・業務に応用できる可能性がある。既存業務の生産性向上だけでなく、昨今注目されてきた「社会課題の解決」に資することも期待される。

私自身、社内業務や社外活動のために生成AI(主にChatGPT4)を使っている。同時にCDO(チーフ・デジタル・オフィサー)を務めているので、社内で生成AIの導入・活用を進めるべく取り組んでいる。その中で強く感じることは、生成AIを活用できる社員には共通する行動特性があることだ。

生成AIの活用に向く行動特性

なぜなら生成AIの活用を促しても、人によって反応や活用の度合いは異なる。これは生成AIに限らず、新しい技術やビジネスモデルにも共通するが、違いを生むのが行動特性にあると私は考えている。では生成AIを活用するには、どのような行動特性が必要だろうか?それは「創造性」、「好奇心」、「学習意欲」が高いことである。

(1) 創造性

創造性とは、新しいアイデアや解決策を思いつく能力や柔軟性のことを指す。生成AIは既存のデータから新しい内容を生成することができるが、その内容が必ずしも有用であったり、正確であったりするとは限らない。この時、生成AIを上手く使える人は、その内容だけで判断するのではなく、創造性を駆使してプロンプト(命令メッセージ)を改良したり、自分でもっといいプロンプトを考えたりする。これができるかどうかは、生成AIと付き合うためにとても大切である。

(2) 好奇心

好奇心とは、知りたいという欲求や興味のことである。すでに多様な分野やテーマに対応する様々な生成AIが登場している。例えば文章などで質問に回答する生成AIはChatGPTだけではないし、絵を描く生成AIも複数あり、増えている。こうした生成AIの動向に興味や関心を持てば、生成AIを利活用する可能性を広げることができる。

(3) 学習意欲

学習意欲とは、知識や技能を身につけることに対する動機や関心のことである。学習意欲が高い人は、生成AIの仕組みや特徴を学んだり、生成AIの利用に関するガイドラインやルールを確認したりすることができる。ある程度まで仕組みを学べば、生成AIの利用方法や限界を推察したり理解したりできる。学習意欲が高い人は、生成AIの利用における問題や課題を解決することができる。

以上のように、創造性・好奇心・学習意欲が高い行動特性を持つ人は、生成AIを効果的に活用することができるだろう。これら行動特性は、生まれながらに持っている場合だけでなく、後天的に育てることもできると私は考えている。企業は社員の行動特性を評価したり育成したりすることで、生成AIの活用を推進することができるのだ。

生成AIを企業で活用するための留意点

生成AIは、多様な分野やテーマに対応し、新規業務の企画開発や既存業務の生産性向上などに活用できる。そのために、社員が生成AIを活用できる体制を構築することが企業に求められる。

そのような体制構築の一環として、社員を「創造性、好奇心、学習意欲」の軸でアセスメントしたり、「創造性、好奇心、学習意欲」を向上させる教育カリキュラムなどを開発し、運営したりするなどの対応も必要となる。

生成AIは、これからもさらに発展し、私たちの生活や仕事に大きな影響を与えることだろう。企業での活用を進めるためには、生成AIの技術面だけにフォーカスするのではなく、それを活用できる人の選定方法や教育方法にも着目することが必要なのである。

住友生命保険相互会社
エグゼクティブ・フェロー デジタル共創オフィサー
岸 和良