cio賢人倶楽部 ご挨拶

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「CIO賢人倶楽部」と「BSIA」、 2つのコミュニティの運営理由と求める価値

更新: 2025年8月1日

 筆者がCIO賢人倶楽部を立ち上げて16年目になる。我ながら任意団体でよく続いているものだと思う。その2年後に立ち上げたBSIA(ビジネスシステム・イニシアティブ協会)は、NPO法人として活動を続けている。いずれもエンタープライスシステムの責任者を務めた筆者自身の経験から、必要性を感じて設立したコミュニティだ。

 CIO賢人倶楽部はCIO(やCDO)のためのコミュニティである。実際にその立場になってみると分かるが、CIOがITやシステムに関して何か相談したいと思っても社内には相手がいない。ITベンダーに相談するわけにもいかない。筆者の場合、むしろベンダーと密な関係になることを好まなかったので、接待の類は全く受けず、特別な招待も受けなかった。

 それは取引において対等性を保つためのベースだったからだ。特に大手ベンダーとは厳しい折衝をよくやった。それでも敵対するようなことはなく、まとまったロットで発注するので、喜ばれたり感謝されたりしながら大幅なコストダウンにもつながった。この経験でベンダーマネジメントの手法や心得を体得した。

 当時、「CIOは孤独だ」という思いが強かった。社内に相談相手がいなくても大きな投資金額の判断をしなければならず、責任も取らねばならない。筆者の場合、事業部門から門外漢のシステム統括になったために、余計にその思いが強かったのかもしれない。投資に失敗したら、辞職する覚悟で取り組んでいた。誰にも相談しなかったかというとそうではない。異業種の同じような立場の人たちに相談相手を求めた。時期を同じくして同様の取り組みをしている会社をよく訪問した。異業種だと結構詳しく内情の話もしてくれて、大変参考になった。

 そんな経験から中立で公平な異業種のCIOが交流する場として、CIO賢人倶楽部を立ち上げた。大きな失敗なく大規模なシステムの再構築を完了させ、CIOを退いて子会社の常勤監査役を務めている時である。会員には金銭的な負担をかけず、活動趣旨に賛同してくれる協賛会社の支援で運営している。協賛会社はすべてベンダー企業である。監査役を任期満了で退任してから株式会社オランを立ち上げ、コンサルティングビジネスをしながら、CIO賢人倶楽部の運営をするようになった。

 CIO賢人倶楽部というネーミングは、2000年ごろにアメリカにSAGE(Strategic Advisory Group for Executives、SAGとも呼ばれていたらしい)というコミュニティがあり、それに倣ったものである。SAGEは主にCIOやITリーダーが集まり、戦略的アドバイスや業界のトレンドについて情報を共有し、リーダーシップ開発やネットワーキングの機会を重視していた。英単語の”Sage”には「シソ科の多年草(ハーブ)」に加えて「賢者」という意味があり、そこから賢人倶楽部と名付けた。

  BSIAの立ち上げのきっかけは全く別の要素だった。背景として、お世話になったベンダーの役員からベンダー丸投げで主体性のないユーザー企業をなんとかしたいという話があった。時を同じくして現在日経BP総研 上級研究員の谷島宣之氏が「ユーザー主体開発のすすめ」を強く主張し、「システム内製を極める」という著作も著していた。

 またユーザー主体開発をテーマにしたシンポジウム『システム・イニシアティブ2011 今こそユーザー主体開発』を2011年2月2日に開催したのを皮切りに、2012年も春、秋にシンポジウムが開催された。その活動を引き継ぐ形で、システムイニシアティブ協会を設立し、後にNPO法人ビジネスシステム・イニシアティブ協会として活動を続けている。コミュニティの対象はユーザー企業のシステムに関わる実務者だが、良いパートナーシップを求めてベンダー企業にも参加いただいている。

 対象とする会員の異なる2つのコミュニティを運営することは容易ではない。CIO賢人倶楽部は筆者の思いで運営しているので、負荷がかかる。常に運営のための資金調達を考えながら、CIOやCDOにとって有益な情報交換の場を形成し、社会的に認知度を高めるための発信や公開セミナーを開催する企画をしている。経営の課題となるデジタル分野でテクノロジーのトレンドも把握しながら、新鮮度を保つ必要がある。最近リタイアされた会員から運営のサポートを受けられるようになり、負荷がだいぶ軽減された。

 BSIAはNPOであり、事務局を中心にしたボランタリー活動で組織的に運営されている。活動資金では常に苦労が絶えない。資金のベースになる会費は法人会員に依っているが、法人会員のうちユーザー企業は筆者の会社だけで、他はすべてベンダー企業である。ユーザー企業がユーザーのためのコミュニティを支援できていないわけで、すでにコミュニティの趣旨と実態が合っていない。だからこそ啓発する活動を継続しなければならないと感じている。

 コミュニティの価値は人と人がリアルで交流する「場」にある。場を通じて情報と知識を共有したり、相互に支え合って孤独感から脱却したり、気づきや新しい発想に触れたりすることができる。それらはすべて参加者の成長に繋がり、組織や社会の健全な発展を促す。こうした点で利益誘導を排除したクリアな交流の場を作ることは社会貢献でもあり、利他の活動の1つでもある。運営サイドは苦労も多いのだが、こう考えればそれも報われるというものである。

以上

CIO賢人倶楽部 会長
木内 里美