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生成AI時代にCIOが果たすべき役割 ~生成AIに関する実態調査 2025春 5カ国比較を踏まえて~

更新: 2025年12月1日

 近年、生成AIの進化は企業経営に大きなインパクトを与えています。誰もが生成AIを活用し、課題解決や事業戦略策定のための情報を容易に取得できる時代となりました。このように情報格差がなくなっていく中で、CIO(Chief Information Officer)には、従来以上に「テクノロジードリブンでの事業貢献」が求められています。

生成AIは企業の在り方を変化させるポテンシャルを持つ

 なぜ、そうなのでしょうか?「生成AIの将来技術動向(https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/generative-ai-survey2025-consideration.html)」は、今後5年・10年を見据えて、①ベースモデル(LLM)のさらなる向上、②デジタル空間:AIエージェントの普及、③フィジカル空間:フィジカルAIの誕生、という3つの潮流を分析し、それらが相まって企業の在り方の変化を引き起こすことを展望しています。生成AIは、それだけのポテンシャルを有するテクノロジーだからです。

 では日本企業の取り組みはどうなのでしょう。PwC Japanグループが実施した「生成AIに関する実態調査 2025春 5カ国比較」によると、日本企業の生成AI導入率は5ヵ国の平均に近い56%と、過半数を超えました。しかし「期待を上回る効果」を実感している企業は米国や英国のわずか4分の1、ドイツや中国の半分に留まります。導入率こそ他国と同等ながら、効果創出の面で日本は依然として大きく水をあけられていることが明らかになりました。

 高い効果を上げている企業は、いずれの国でも生成AIを単なる効率化だけではなく、業務や事業構造を改革する手段と捉え、新たなガバナンスを整備して業務プロセスへ本格的に組み込んだり、従業員への価値還元に取り組んだりしています。日本では、このような先進的な取り組みを行っている企業の割合がまだ少なく、そのことが効果を実感できるかどうかの差となって表れていると考えられます。

生成AI活用で高い効果を上げている企業の共通点とは?

 「生成AIに関する実態調査 2025春 5カ国比較」を、もう少し深掘りしてみましょう。生成AI活用で高い効果を上げている企業の共通点は次の3つに集約できます。

①経営トップの関与とCAIO(Chief AI Officer)などの明確な責任体制の下で推進
「期待を大きく上回る」と回答した層の6割が「(CAIOを配置している)」と回答
②生成AIを中核プロセスに統合
「生成AIによる業務置き換えの見込み」の設問で、「期待を大きく上回る」と回答した層では、約7割が「完全に置き換わる(100%)」「大部分が置き換わる(60~80%程度)」と回答
③従業員への還元策の整備
「生成AIで生まれた効果の還元先」の設問で、「期待を大きく上回る」と回答した層では、約7割が効果の還元先として「従業員への利益還元(給与増加、ボーナスなど)」と回答

 一方、効果が期待を下回ると回答した企業は、生成AIを単なるツールとして断片的に導入し、現場任せの推進にとどまっています。これらの調査結果から、全社的なAI活用のムーブメントを引き起こし、成果を上げていくには、経営層のリーダーシップが必要であるといえます。

CIOへの提言:自ら生成AIを活用する「ゲームチェンジャー」になる?

 多くの企業が、従業員が生成AIを簡単に利用できようにセキュリティを含めた利用環境の整備を終えています。しかし上位マネジメント層の利活用はどうでしょうか。私は、社員へ利活用を促していても、自ら利用して価値を実感したり経営/業務で何らかの効果を得たりしている人たちは、まだ少数派に留まるのではないかと感じています。それはCEOやCFOだけでなく、もしかするとCIOの方々も同じかも知れません。

 何しろ私自身、生成AIが使えるようになって間もない頃、チームのメンバーに対して「生成AIを活用して〇〇%の生産性を向上しよう」と、他人事のように言っていました。思い出すと恥ずかしい限りです。今では日常業務において欠かせないツールとなり、仕事の進め方や質が日々向上していることを実感します。

 生成AIは従来のテクノロジーやソリューションとは異なり、使えば使うほど、その効果を肌で感じることができます。自ら使用することで、周囲のメンバーに対しても「このように生成AIを活用すれば、業務を改善、ビジネスに貢献できるのでは」と、より具体的な指示ができるようになりました。

 力を持っている上位マネジメント層の方々が、自ら生成AIを活用し、業務の改善、ビジネスの改革に取り組む姿勢を見せられれば、会社全体での生成AI活用も一気に進むものと思われます。生成AI時代のCIOは、テクノロジーと人・組織の両輪で変革をリードする存在です。今こそAIを「自社の競争優位の源泉」として、最大限活用するための戦略的な一歩を踏み出しましょう。

PwC コンサルティング合同会社
執行役員 パートナー
神野 真人

<筆者経歴>
複数の国内金融機関、外資系ITベンダーおよびコンサルティングファームを複数社経験したのちPwCコンサルティングに入社。 国内金融機関では、IT子会社の役員職としてシステム品質管理/システムリスク管理を統括。また次世代システム検討組織設置やIT技術力認定制度創設などの改革をリードした。PwCコンサルティングでは執行役員パートナーという立場で、エンタープライズ系の大規模システムのモダナイゼーション/マイグレーションにかかる計画/実施から、生成AI導入検討にかかる幅広い領域でのコンサルティングまで手がける。