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生成AIが問い直す「私たちが諦めてきた仕事」

更新: 2026年2月1日

 企業や組織が生成AIの活用について考えるとき、視点は「これから先」に向くことが多いと思います。

「今後やりたいことをどう実現するか」
「将来目指す姿に対して生成AIをどう使うか」
「次の経営計画で何に取り組むか」

 生成AIは未来の仕事を実現する手段ですので、こうした考え方は自然だと思います。一方で企画や問題解決に携わってきた経験から考えると、私は別の使いどころもあると感じています。それは、過去にできなかった仕事を、もう一度やり直すための手段になり得るということです。この視点で生成AIを使うことは、とても重要だと考えます。

「できない理由」ゆえに見送ったり放置してきた仕事は多い

 どういうことかというと、企業には長いあいだ手を付けられずにきた仕事が、数多く残っているはずです。例を挙げると、過去、検討された新規サービスの企画です。市場調査に時間がかかる、企画書を精緻化するだけで数週間かかる、PoCを回す人員が確保できないといった理由で見送られた企画は、どの企業にも少なからず眠っているでしょう。

 アイデアが悪かったというより、検討するためのコストが重すぎたのですが、そうした仕事(企画)が、その後あらためて議論されることは、ほとんどありません。否定されたわけではありませんが、再び検討の場に戻ることもなく、静かに忘れられていきます。

 このように多くの仕事は、「できない理由」が検討を続けるか否かに大きな影響を与えます。時間が足りない、人が足りない、専門知識がない、コストが合わないーー。こうした制約条件を前提としつつ、できる範囲で検討がなされてきました。

 社内業務の改善もその典型でしょう。非効率だと分かっている業務があっても、「現場ヒアリングに時間がかかる」「業務フローが複雑で整理できない」「システム部門の工数が取れない」といった理由で結局、現状維持のままになっているようなケースです。問題が明らかであっても、それを掘り下げる負担が大きすぎる場合は「忘れ去られる」ことになります。

昔はあった時間やコストの制約を、生成AIで乗り越える

 生成AIは、こうした制約のいくつかを変えてしまう可能性を持っています。時間や人が足りない、費用がかかりすぎる、調査方法が分からない、といった制約が、以前ほど強いブレーキではなくなりつつあるのです。

 前述した、お蔵入りになった新規サービス企画を考えてみましょう。当時は、企画構成を考え、文章を書き、図を作り、整える時間や体力が、制約になっていました。今なら、アイデアを生成AIに入力するだけで、短時間でたたき台ができます。それを見ながら、「この企画は今なら進められるか」「どこに現実的な課題があるか」を冷静に議論できるようになります。

 業務の改善も同様です。過去に手を付けられなかった業務を箇条書きで入力すれば、業務の整理案や改善の方向性が示されます。それをベースに「今の体制でどこまでできるか」「どこはやはり難しいか」を切り分けて考えることができます。

 まとめると、いくつかの制約ゆえに進められなかった、そして諦めてしまった新規サービスや業務改善のアイデアを生成AIに投入すれば、当時の判断をもう一度問い直すきっかけを与えてくれます。その意味で、お蔵入りさせたアイデアや業務の改善案などを、改めて現代に復活させる可能性を持った技術が生成AIだと思います。

 そんな生成AIの可能性を「解き放つ」ために何が必要でしょうか。私は、過去の常識で考えたことを放置しないこと、そして次のようなことをお薦めします。

「過去に封印してしまった企画書をもう一度開いてみる」
「途中まで書いた業務改善メモを生成AIに整理させてみる」
「人がいない、時間がないとして棚上げしたテーマを見直してみる」

 その結果、やはり難しいと分かれば、それはそれで構いません。重要なのは「昔ダメだったから」という理由だけで決めないことです。今一度、生成AIを使って、その判断をやり直すことに意味があるのだと私は思います。

住友生命保険相互会社
エグゼクティブ・フェロー
デジタル共創オフィサー
岸 和良