cio賢人倶楽部 ご挨拶

知っておきたいITトレンド

No.1 レガシーシステムの先にあるもの

【レガシーシステムの現状】

古い技術で構築され故障が絶えないシステム、処理内容や構造が分かる人材がいないシステム、他のシステムと接続しようとすると、それだけで改修に膨大な費用がかかるシステム・・・。こうしたシステムは専門用語で「レガシーシステム」と呼ばれます。正確な統計データはありませんが、構築したものは大事に使うという日本人の特性から、企業の多くは複数のレガシーシステムを抱え、相当の費用と人手をかけて利用しています。
レガシーシステムの刷新=レガシーマイグレーションに関わる問題は、よく
  1)システムを知るベテラン技術者が引退し、システムの保守やメンテナ
    ンスができなくなる。
  2)レガシーシステムは最新のシステムに比べて高価であり、運用費用も
    含めると高コストである。
といった理由から対処が必要と言われます。これらは所詮、お金の問題であり、それに目をつむれば技術者不足も運用費も問題ではなくなるため、対処が行われないまま、レガシーシステムが温存されてきた経緯があります。

【なぜ今なのか?】

しかしそれも、もはや限界です。企業が構築・運用するシステムは、これまで業務を効率化・省力化するのが主目的でした(図1参照)。総称して「Systems of Record(記録、あるいは業務遂行のためのシステム)」と呼ばれるこの種のシステムは、利用するのは社員です。多少古くても機能が劣っても、我慢して使っているうちに慣れてきますし、システムでできないことは社員がカバーすることができました。ですから一部にレガシーシステムが存在しても、何とかなっていました。
しかし今日において企業は、
  1)この道3年といったベテランの減少
  2)在宅勤務などワークスタイルの刷新
  3)外国人の雇用
  4)グローバル化
といった変化にさらされています。そのうち慣れるといった社員のやる気や能力に依存したシステムでは、効率的な事業運営を望めなくなるどころか、業務処理上で間違いやミスが頻発する事態が想定されます。費用の問題を超えて対処する必要があるのです。

【取り組みのポイント】

より大きな要因が、インターネットの普及とITの進化が相俟って現在、Systems of Recordとは特性の違う、まったく新たな種類のシステムを構築、運用する必要が生じていることです。例えばモバイル機器の特性を生かした顧客サービスを強化するシステムや、モノ(製品や建造物)にチップやセンサーを埋め込み、故障検知をしたり障害を予測するIoT(モノのインターネット化)と呼ばれるシステムが、その典型例です。

知っておきたいITトレンド

こうした新しい未来型のシステムは、外部の顧客や取引先、あるいは製品や建造物に関与するという意味で、Systems of Engagementと呼ばれます。難しいのはSystems of Engagementは裏側でSystems of Recordと繋がり、連携動作することによって必要な機能を実現することです。逆に見れば、連携に時間と費用がかかるようだとSystems of Engagementの構築に時間がかかり、顧客やモノとのエンゲージメントをスピーディに実現できません。すなわち顧客へのサービスや製品などの機能強化をスピーディにできないことになり、それは”競争劣位”に直結してしまうのです。
経営・事業に占めるIT(情報システム)の役割が数年前に比べると飛躍的に大きくなり、それはさらに加速することは間違いありません。この点でレガシーマイグレーションは最優先で対処すべきシステム課題の1つです。