オピニオン
AIの進化でますます重要になるビジネスアナリストの役割
更新: 2026年1月1日
皆様、明けましておめでとうございます。今年が穏やかな愛で包まれた一年となることをお祈りいたします。
さて、さて、ここからは「である調」で書かせていただく。情報処理推進機構(IPA)が策定したDX推進スキル標準(DSS-P)では、企業や組織においてDXを推進する主な人材として5つの人材類型を定義している(https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/dss/index.html)
具体的にはソフトウェアエンジニア、デザイナー、データサイエンティスト、サイバーセキュリティ、それにビジネスアーキテクトである(図)。ITやDXを担う専門家といえば、技術系のエンジニア人材の必要性が声高に叫ばれていた中で、「ビジネスアーキテクト」というビジネス寄りの仕事をする人材の必要性を訴えたのは画期的なことだと思う。

ただDSS-Pにおけるビジネスアーキテクトの定義には、若干の違和感があった。そのまま引用すると、「DXの取り組みにおいて、ビジネスや業務の変革を通じて実現したいこと(=目的)を設定した上で、関係者をコーディネイトし関係者間の協働関係の構築をリードしながら、目的実現に向けたプロセスの一貫した推進を通じて、目的を実現する人材」がその定義である。これはアーキテクトというより、ビジネスアナリストの仕事そのものだ。
こうした人材類型やスキル定義で先行する欧米では、実は様々なビジネスアナリストが活躍している。主にITの導入を担うビジネスシステムアナリスト、業務プロセス改善を行うファンクショナルビジネスアナリスト、ソフトウェアプロダクト・サービスの価値向上のための改善を行うプロダクトアナリスト、データ分析に強みを持つビジネスインテリジェンスアナリスト、などが例である。
一方、ビジネスの構造管理を行いながら全体最適を図るための変革プロジェクトの企画などを担う人たちを、欧米では「ビジネスアーキテクト」と呼んでいる。広義のビジネスアナリストの人材類型にビジネスアーキテクトを含めるか、それともビジネスアーキテクトを別の人材類型にするかは議論が分かれるようだが、少なくともDSS-Pでいうところの「ビジネスアーキテクト」の定義とは異なる。これが違和感の理由である。
しかし現在、それは解消している。2025年7月、「Society 5.0時代のデジタル人材育成に関する検討会」の報告書が公開された(https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/society_digital/index.html)。そこではビジネスアーキテクトと人材類型の役割を、ビジネスアーキテクト、ビジネスアナリスト、プロダクトマネージャー(プロダクトアナリスト)の3つに分解し、それらの人材類型はある程度、海外と齟齬がない形で定義されたからだ。
ちなみに筆者は2025年末に「Society 5.0時代のデジタル人材育成に関する検討会」の座長を務めた三谷慶一郎氏(NTT経営研究所 主席研究員 エグゼクティブコンサルタント)と話をする機会があった。三谷氏曰く、「検討会ではDXに必要な人材をスキルベースで明確化(見える化)する必要性を訴えたかった」という。
少し説明すると、多くの日本企業は「DX人材が足りない」と言うが、では「どういった人材が必要か」と聞いても明確な答えが返ってこない。人材類型や保有スキルをちゃんと定義・整理していないわけで、それでは人材を採用したり育成したりようとしても、うまくいくわけがない。だからこそ同検討会は「DXに必要な人材はどんなスキルを持つべきなのか」を議論、検討してきたわけだ。
ただ、気になることもある。AIが今後ますます進化していく中で、座学で学べるようなスキルはAIが人間を凌駕する可能性がある。IT関連の仕事では下流工程や作業系の仕事はAIに置き換えられ、上流の要求分析や設計、そしてプロジェクトのマネジメントの一部も、AIが担うようになるはずだ。企業システムの内製化はますます加速し、必然的にIT業界の多重請負構造は崩壊していくだろう。
とはいえ、人間が主体としてビジネスが行われる限り、対人関係や問題解決、リーダーシップなどのソフトスキルが、専門知識や技術などのハードスキルに比べてますます重要となるのは間違いない。とすればソフトスキルを扱う人材、つまりDX推進スキル標準の5つの人材類型におけるビジネスアーキテクト、すなわちビジネスアナリストの役割や仕事がますます重要になってくるはずだ。
さらにAIをデジタル労働力として企業の中で活用していく際に、業務の再設計は避けては通れない。そのためには現状の業務プロセスの可視化と分析が必須となる。こうしたことを行えるのもビジネスアナリストである。AIが進化してもIT関連の人間の仕事として残っていくもの、それこそがビジネスアナリストの仕事に他ならない。欧米では100万人以上のビジネスアナリストが多くの会社で活躍している中で、日本での認知度があまりにも低いのは残念でたまらない。この機会にぜひビジネスアナリストおよびビジネスアナリシスへの理解を深めていただければ幸いである。
TERRANET
代表 寺嶋 一郎
